「病院薬剤師は給料が安い」——これは就活生や転職希望者が抱く定番のイメージです。しかし実態を示すデータは少なく、「実際いくら貰えるのか?」は長らくブラックボックスのままでした。
この記事では、都内の某私立大学病院(分院)に8年間勤務した現役薬剤師が、入職1年目(25歳)から8年目(32歳)までのリアルな額面年収の推移を包み隠さず公開します。
📋 この記事でわかること
- 1年目(425万円)〜8年目(約570万円)までの具体的な年収推移
- 各年齢時点の年収が都内同年代の平均と比べて妥当かどうか
- ボーナス偏重・年功序列が残る病院給与体系のリアル
- 薄給のストレスと、臨床・研究・職場環境とのバランス
給料が低いという理由だけで病院を敬遠するのはもったいないかもしれません。本記事を読めば、病院薬剤師があなたにとって「選択肢」となるかどうか、給料とキャリアのバランスを判断できるはずです。
目次
前提
本記事では私の年収を公開していますが、個人情報保護の観点から源泉徴収票などの画像は添付できません。見方によっては「根拠のないデータ」と捉えることもできますが、できる限り正確な情報を記載することをお約束します。
ご注意ください
病院薬剤師の年収は公立・私立・学校法人などによって大きく異なります。本記事はあくまでも都内の某私立大学病院に勤務していた私個人の年収であることをあらかじめご了承ください。
業務内容・年間休日
詳しい業務内容については別記事をご覧ください。
勤務体制は基本的にカレンダー通りですが、ゴールデンウィーク・シルバーウィーク・年末年始の大型連休では中日(なかび)に必ず出勤があります。また第1・3・5土曜日は半日勤務です。
法定休日・祝日の日直は月1回ほどあるため、年間休日は実質100日を下回ります。有給は年間20日付与されますが、消化できるのは10日程度。夏季休暇5日は確実に取得できますが、業務の都合上まとめて1週間単位での取得に限られます。
💡 残業について
残業は概ね月10〜20時間ほど。年末年始・ゴールデンウィークの中日出勤分は全額残業代として処理されるため、単純に月収×12の計算値とは一致しません。
年収推移(1年目〜8年目)
私の勤務先では、公務員ではないものの俸給表に基づいて給与が設定されています。年功序列がしっかり残っている病院のため、長く勤めるほど収入は上がりますが、若手のうちは昇給ペースが緩やかなのが現実です。
毎年の昇給は概ね3%程度、基本給にして月額7,000〜8,000円のアップ。以下はすべて額面年収です(手取りは概ね×0.8)。
1年目(25歳) 2017年
1年目の基本給は217,800円。住宅手当23,000円・通勤手当4,000円・その他3,000円程度を加えた月収は約24万円でした。ボーナスは夏が寸志(7万円)、冬が基本給×2.7ヶ月分(約58万円)。1年目はほぼ残業なし、年明け1月から月2回の当直が始まり月収が26万円程度に増えました。
6年間の学生生活と難易度の高い国家試験を突破してこの年収……コスパが良いとは言い難いですが、2年目以降はボーナス満額支給になるので期待して見ていきましょう。
💰 1年目の年収:約425万円
基本給217,800円/ボーナス寸志含む。病院薬剤師の平均年収はなんとか上回る水準。
2年目(26歳) 2018年
基本給は224,800円。当直は月2回継続、残業が月5〜10時間ほど発生し月収は約29万円に。そして念願のボーナス満額支給——年間ボーナスは116万5,000円と、一気に跳ね上がりました。
東京都の25〜29歳平均年収は444万円(当時)なので、平均をやや上回る水準です。ただし薬剤師は社会人スタートが2年遅れる点を考えると、やや割に合わない感も否めません。
💡 ボーナスが高い=良い職場ではない
ボーナスとは本来、月々の給与として支払われるべき報酬を積み立てて後払いしているに過ぎません。ボーナス額だけで職場の良し悪しを判断するのは危険です。
💰 2年目の年収:約464万円
基本給224,800円/ボーナス満額支給で大幅増。都内25〜29歳平均(444万円)を上回る。
3年目(27歳) 2019年
基本給は232,800円。残業が月10〜20時間に増え、月収は約30万円になりました。ボーナスも基本給上昇分だけ増加。この年は上司からのパワハラが続き、給与の割に合わないほど精神的に消耗していた時期でした。
💰 3年目の年収:約480万円
基本給232,800円/定期昇給分のみ増加。精神的に辛い時期が続いた。
4年目(28歳) 2020年
基本給は241,800円。この年はご存知の通り、新型コロナウイルスのパンデミックが直撃しました。担当していた腎臓内科・外科病棟がコロナ専用病棟に転換され、いつの間にか「コロナ担当薬剤師」となっていました。完全防備での危険エリア入室、看護師との業務フロー構築……一般病棟では経験しない業務が山積みでした。
コロナ手当の不公平な支給
医師・看護師には特別手当が支給されたにもかかわらず、実際に患者のそばで働いていた薬剤師・放射線技師・臨床検査技師などのコメディカルには一切支給されませんでした。ボーナスへの全職員一律手当のみ。
💰 4年目の年収:約500万円
基本給241,800円/コロナ特別手当加算で大台到達。30歳前に500万超えという個人目標を早期達成。
5年目(29歳) 2021年
基本給は250,200円。コロナ担当から1年半で解放され、一般病棟へ復帰。上司のパワハラもなくなり、精神的に落ち着いた時期でした。月収は概ね31〜33万円、残業の増加とボーナスへの一律コロナ手当が後押しし、年収が大きく伸びました。
この年は投資を始めた年でもあります。当時の総資産は約607万円。節約に加えて投資という新たな武器を手に入れ、その後3年で資産を900万円以上増やすことができました。
💰 5年目の年収:約520万円
基本給250,200円/残業増+コロナ手当で大幅増。精神的にも安定した年。
6年目(30歳) 2022年
基本給は259,100円。残業は月20時間程度で大きな変化なし。休日出勤の増加が影響したのか、年収はグッと増加。この年に結婚しました。
💰 6年目の年収:約539万円
基本給259,100円/休日出勤増加が押し上げ要因か。プライベートでも大きな変化あり。
7年目(31歳) 2023年
基本給は267,800円。残業が多く月収は35万円前後で推移。薬剤師の30〜34歳平均年収は564万円とされており、31歳時点での552万円は妥当な水準といえます。額面552万円でも手取りは約442万円。そこから家賃・食費・車の維持費などを差し引くと、決して余裕ある生活とはいきません。
💰 7年目の年収:約552万円
基本給267,800円/薬剤師30〜34歳平均(564万円)にほぼ並ぶ水準。手取りは約442万円。
8年目(32歳) 2024年
基本給は276,800円。残業は月10〜20時間程度で大きな変化はありませんでした。
この年の最大のトピックは、年度初めに退職の意思を表明したことです。9年目での企業転職を決断し、後継者への引き継ぎ業務がメインの1年となりました。8年間積み上げてきた知識・経験・業務フローを整理して次の担当者に渡す作業は、自分のキャリアを振り返る良い機会にもなりました。
9年目は企業へ転職したため、病院薬剤師としてのデータはここで終了です。転職の経緯や企業薬剤師との年収・働き方の比較については別記事で詳しく書いています。
💰 8年目の年収:約570万円
基本給276,800円/薬剤師30〜34歳平均(564万円)をわずかに上回る。退職宣言〜引き継ぎで締めくくった最終年。
8年間の年収まとめ
8年間で年収は約145万円増加。毎年の昇給額は一定でも、ボーナスが基本給連動のためトータルの伸びはそれなりに大きくなります。
| 年次 | 年齢 | 基本給 | 額面年収 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 25歳 | 217,800円 | 約425万円 |
| 2年目 | 26歳 | 224,800円 | 約464万円 |
| 3年目 | 27歳 | 232,800円 | 約480万円 |
| 4年目 | 28歳 | 241,800円 | 約500万円 |
| 5年目 | 29歳 | 250,200円 | 約520万円 |
| 6年目 | 30歳 | 259,100円 | 約539万円 |
| 7年目 | 31歳 | 267,800円 | 約552万円 |
| 8年目 | 32歳 | 276,000円 | 約570万円 |
💡 手取り換算の目安
額面年収に約0.8を掛けた値が手取りの目安です。8年目(570万円)の場合、手取りは約456万円となります。
病院薬剤師をおすすめできる人
病院薬剤師の年収は年功序列の影響が大きく、若いうちはなかなか上がりません。卒業後すぐに高収入を求める人には向かないかもしれません。一方で、腰を据えて長く働ける職場が見つかれば、将来的には薬局・ドラッグストア勤務を凌ぐ可能性も十分あります。
こんな方には病院薬剤師がおすすめ
- 最新の治療法や注射剤を用いた高度医療に関わりたい
- 臨床研究・学会発表など専門性を深めたい
- カウンター越しの服薬指導よりもカルテ分析・医師への提案が好き
- 給料よりもやりがいや成長環境を重視する
こんな方には注意が必要
- 卒業後すぐに高収入を求めている(若手のうちは薬局・ドラッグストアが有利)
- 人間関係が閉鎖的な職場では精神的に消耗しやすい方(当たり外れはあり)
私が8年間続けられた最大の理由は人間関係の良さです。仲の良い先輩・同期と釣りやキャンプに行ったり、愚痴を言い合ったりできる仲間の存在は、仕事を続ける上での大きな原動力でした。病院は薬剤師の人数が多く部署も広いため、一度人間関係がこじれても意図的に距離を置きやすいのもメリットです。
ただし、年功序列ゆえに「明らかに自分より仕事していない上司が1.5倍の給料を貰っている」という理不尽に直面することもあります。これはメンタルに来ます(笑)。
🏆 結論:給料だけで病院を避けるのはもったいない
薬局より給与が低い場面もありますが、その差は思ったほど大きくないケースも多いです。やりがい・専門性・職場環境・将来性を総合的に判断した上で検討してみてください。
まとめ
今回は都内の私立大学病院で8年間働いた病院薬剤師の、1年目から8年目までのリアルな年収推移を公開しました。
重要なのは収入の多寡よりも、生活コストを上げずに資産を積み上げられるかという点です。節約を習慣化し、余力ができたら年収アップに向けて行動する——この順番が、着実な資産形成への近道だと私は考えています。
📋 この記事のポイントまとめ
- 1年目425万円→8年目570万円と、8年で約145万円増加
- 毎年3%程度の定期昇給+ボーナス連動で着実に伸びる
- 若手のうちは薬局・ドラッグストアより低いが、差は縮まる
- 年収だけでなく、専門性・やりがい・人間関係も含めて判断を
- 9年目は企業転職。詳細は別記事で公開中

