健康

【薬剤師が解説】絶対受けろ!内視鏡検査の重要性──ピロリ菌・胃潰瘍・胃がんから命を守る再現性の高い方法

「胃カメラは苦しいから、できるだけ避けたい…」
かつての私もそう思っていました。

しかし実際に胃潰瘍を発症し、ピロリ菌陽性が判明、除菌治療を受けた薬剤師として断言します。
内視鏡検査は、苦痛を上回る“命を救う検査”です。

1. 内視鏡とは?──「見る」ことこそ、医療の原点

内視鏡とは、カメラと光源が先端についた細いチューブ状の医療機器です。

https://www.jmoia.jp/products/endoscope.html引用


主に以下の2種類があります:

  • 上部内視鏡(胃カメラ)口や鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸を観察
  • 下部内視鏡(大腸カメラ)肛門から挿入し、大腸全域を観察

CTや血液検査では見落とされる“ミリ単位の病変”を直接確認できるのが内視鏡の最大の強みです。
また、ポリープの切除や組織採取(生検)など、診断と治療を同時に行える点も大きな特徴です。

2. ピロリ菌と胃潰瘍──「胃が痛い」は放置してはいけない

胃潰瘍の多くは、**ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori)**が関与しています。
この菌は胃酸という強酸の中でも生き延びる特殊な性質を持ち、慢性的な炎症(萎縮性胃炎)を引き起こします。

https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/h-pylori/about/引用

結果として胃粘膜が薄くなり、潰瘍・出血・発がんへと進行するリスクが高まります。

🔬薬剤師が見る除菌の仕組み

ピロリ菌除菌は、以下の3剤を1週間内服します:

  • PPI(プロトンポンプ阻害薬)
  • アモキシシリン
  • クラリスロマイシン

※一次除菌で失敗した場合はメトロニダゾールを用いた二次除菌を行う。
成功率は約80%前後ですが、「飲み切ること」が成功の最大の鍵です。

私はボノサップパック400という上記3剤がセットになった薬を1週間内服しました。

代表的な副作用は下痢であり、私ももれなく下痢になりました。

内服終了から約1~2カ月後に除菌の成果を確認する検査を受け、晴れて一次除菌に成功しました。

3. 胃がんとピロリ菌──“がんの温床”を放置してはいけない

ピロリ菌感染は胃がんの最大の原因とされており、感染者は非感染者の5〜10倍胃がんになりやすいことが報告されています。

根拠論文:Uemura N, et al. New Engl J Med. 2001;345(11):784–789.
(ピロリ菌感染者の胃がん発症率は、非感染者の10倍に上昇)

感染を放置すると慢性炎症が続き、細胞の修復過程でがん化のリスクが増加。
除菌により胃がん発症率が有意に低下することも、複数の臨床研究で確認されています。

4. 若くても油断できない──スキルス胃がんの脅威

胃がん=中高年の病気と思われがちですが、
スキルス胃がんは20〜30代の若年層でも発症します。

特徴は以下の通り:

  • 胃の壁全体が硬く厚くなる「びまん性浸潤型」
  • 自覚症状が出にくく、気づいたときには進行がんであることが多い
  • 5年生存率は15〜20%と非常に低い

遺伝的要因や細胞の異常な修復反応が関係しており、生活習慣を整えても防げないケースがあります。
唯一の対抗手段は、定期的な内視鏡検査による早期発見です。

5. 大腸カメラの重要性──沈黙のがんを見逃さない

食生活の欧米化により、日本では大腸がんが最も多いがんとなっています。
初期症状がほぼなく、「便潜血陽性」で発見されるケースも多いです。

内視鏡では、ポリープの段階で切除できれば100%近く治癒が見込めます。
大腸がんの多くは、ポリープ(良性腫瘍)が数年かけてがん化するため、
“早く見つければ助かるがん”の代表格です。

6. 私が受けた「胃カメラ」体験──苦痛の先に見えた安心

私自身、2度の上部内視鏡を受けました。
鎮静剤(セデーション)なしの検査は、正直言ってかなり辛いものでした。

喉を通る際の強烈な嘔吐反射、涙と唾液が止まらない苦しさ…。
それでも、胃潰瘍の発見・ピロリ菌陽性の診断・除菌成功という結果を得られたことで、
“受けてよかった”と心から思える検査でした。

近年ではセデーションの進歩や内視鏡の性能向上により、なるべく苦痛を取り除いて内視鏡を受けることができる環境になってきていると思います。

セデーションを受ける場合、車の運転や仕事はできないので、人間ドック休暇(健診休暇)などの時にまとめて行うことをおすすめします。

また、クリニックを選ぶときは消化器内科専門医、認定医などを掲げている医療機関を選ぶべきです。

消化器内科の医師は数100から1000件以上内視鏡検査を経験しており、技術力や経験値が極めて高いと言えます。

内視鏡検査の苦痛を回避する上で検査者(医師)の技術力はかなり影響します。

必ず消化器内科専門または専門医の常駐している医療機関で検査を受けましょう。

7. 内視鏡検査が「命を救う」理由

  • CTや血液検査では発見できない微小病変を確認できる
  • 検査中に組織採取・切除が可能
  • がん・潰瘍・炎症・ポリープなど、ほぼ全ての消化管疾患を直接観察可能
  • **「見て」「取って」「調べて」「治す」**を一度に行える唯一の検査

8. 薬剤師からのメッセージ──「費用」よりも「命の投資」を

胃がん・大腸がんは、早期発見ならほぼ完治できる時代です。
その入口が内視鏡検査。

40歳を過ぎたら年1回。
できればピロリ菌の既往がある方、NSAIDsを常用している方、
慢性的な胃痛・胸やけ・血便がある方は、すぐに検査を受けてください。

自覚症状があり、医師が診断に必要と判断すれば保険適応で内視鏡検査を受けることができます。

検査内容自己負担額の目安備考
胃カメラ(観察のみ)約3,000円〜6,500円程度初診料や鎮静剤の有無で変動します。
胃カメラ + 生検・病理検査約8,000円〜12,000円程度組織を採取し、詳しく調べる場合です。
大腸カメラ(観察のみ)約5,000円〜8,000円程度初診料や鎮静剤、検査薬代を含みます。
大腸カメラ + 生検・病理検査約10,000円〜16,000円程度組織を採取し、詳しく調べる場合です。
大腸カメラ + ポリープ切除約20,000円〜35,000円程度ポリープの数や大きさによって変動します。

私は初回に観察+生検・病理検査まで行ったため、自己負担として10000円ほど掛かりました。

セデーションをオプション的に追加するとその薬剤費や看護師の処置料などが追加されます。

🔍まとめ:見なければ始まらない

  • 内視鏡は“苦しい検査”ではなく、“安心を得るための投資”
  • ピロリ菌除菌は胃がん予防の第一歩
  • 若くても油断せず、スキルス胃がんの存在を知る
  • 「症状が出てから」では遅い

薬剤師として、患者を数多く見てきた経験から言えます。
「見つかる」うちは、まだ治せる。
だからこそ、今こそ内視鏡を受けてください。

ABOUT ME
hiropon
初めまして。ヒロポンです。 新卒から大学病院8年間勤務し、転職して現在は企業薬剤師をしています。 医療や健康についての情報発信をしたいと思いブログを始めました。 定期的に皆さんの健康に寄与する記事を更新しますので、よろしくお願いします。