健康

【元大学病院薬剤師が実体験で解説】内視鏡検査を絶対に受けるべき理由──ピロリ菌・胃潰瘍・胃がんから命を守る、再現性の高い方法

「胃カメラは苦しそうだから、人間ドックのオプションには入れなくていいか——」

健康診断の案内を手に、そう判断した経験はないでしょうか。

かつての私も同じでした。大学病院で8年間、消化器外科病棟を含む急性期の現場で薬剤師として働いてきた。胃潰瘍も胃がんも、誰よりも近くで見てきたつもりでした。それでも「自分は大丈夫」という根拠のない自信があった。

その慢心が崩れたのは、ある日突然のことでした。

何の前触れもなく、みぞおちを鋭く刺されるような激しい痛みが走ったのです。波のように繰り返し押し寄せる痛みに冷や汗をかきながら、「これはただの胃もたれではない」と直感しました。

結果は胃潰瘍+ピロリ菌陽性。その後、除菌治療と2度の内視鏡を経て、現在は経過良好です。

この記事では、大学病院薬剤師としての専門知識と、患者として内視鏡を2回受けた体験の両方から、内視鏡検査の本当の価値をお伝えします。人間ドックや健康診断で「胃カメラを受けるか迷っている」という方に、特に読んでいただきたい内容です。




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ひろぽん|薬剤師(大学病院→企業薬剤師)

大学病院に8年間勤務し、消化器外科病棟を含む急性期医療の現場で薬剤師として従事。現在は企業薬剤師1年目。自身も胃潰瘍・ピロリ菌陽性を経験し、除菌治療と2度の内視鏡を受けた当事者でもある。薬の専門家として、そして患者として——両方の視点から消化器疾患と内視鏡の重要性を発信。

📋 この記事でわかること

  • 内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)が命を救う理由
  • ピロリ菌と胃潰瘍・胃がんの医学的な関係
  • 除菌治療の仕組みと「飲み切る」ことの意味
  • スキルス胃がん・大腸がんを早期発見する唯一の方法
  • 大学病院薬剤師が2回の胃カメラを受けた実体験
  • 費用・受診タイミング・クリニックの正しい選び方

内視鏡とは何か──「見る」ことが医療の原点

内視鏡とは、先端にカメラと光源を搭載した細いチューブ状の医療機器です。主に2種類があります。

種類 挿入経路 観察できる部位
上部内視鏡(胃カメラ) 口または鼻 食道・胃・十二指腸
下部内視鏡(大腸カメラ) 肛門 大腸全域

内視鏡最大の強みは、CTや血液検査では捉えられないミリ単位の病変を、粘膜表面から直接視認できる点です。

加えて、ポリープの切除や組織採取(生検)を検査中に行えるため、「診断」と「治療」を1度の処置で完結できます。人間ドックの血液検査やバリウム検査では拾えない異変を、最も確実な形で把握できる手段——それが内視鏡です。

💡 大学病院の現場から

消化器外科病棟で働いた経験から言えば、「もう少し早く内視鏡を受けていれば」という患者さんを何人も見てきました。CTで映らない段階の病変を内視鏡で見つけることが、その後の治療の質を根本から変えます。

ピロリ菌と胃潰瘍──「胃が痛い」を放置してはいけない理由

胃潰瘍の原因の大部分は、ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori)の感染です。この菌は胃酸という強酸環境の中でも生存できる特殊な性質を持ちます。感染が長期化すると、胃の粘膜に慢性的な炎症(萎縮性胃炎)が起き続け、胃粘膜が薄く脆くなっていきます。その結果として、潰瘍・出血、最終的にはがん化へのリスクが着実に積み上がっていきます。

日本人のピロリ菌感染者は推定約3,500万人とされており、特に50代以上での感染率が高い傾向があります。衛生環境が整っていなかった時代に幼少期を過ごした世代での経口感染が主な原因です。

薬剤師が解説する除菌治療の仕組み

ピロリ菌の除菌治療は、以下の3剤を1週間継続内服する三剤併用療法が標準です。

薬剤 分類 役割
PPI(プロトンポンプ阻害薬) 制酸薬 胃酸分泌を抑え、抗菌薬が働きやすい環境をつくる
アモキシシリン ペニシリン系抗生物質 菌の細胞壁合成を阻害し、直接殺菌する
クラリスロマイシン マクロライド系抗生物質 菌のタンパク質合成を阻害し、増殖を止める

一次除菌の成功率は約80%です。失敗した場合は、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに切り替えた二次除菌へ進みます。

途中でやめないことが絶対条件

除菌が不完全に終わると耐性菌が生じ、その後の治療が著しく困難になります。下痢などの副作用が出ても、7日間飲み切ることが除菌成功の絶対条件です。私自身も患者さんに繰り返し伝えてきたこの言葉を、自分が体験することになりました。

私自身はボノサップパック400(上記3剤のセット製剤)を1週間内服し、教科書通りに下痢を経験しました。内服終了から約1〜2ヶ月後の確認検査で、一次除菌の成功が確認されています。

胃がんとピロリ菌──感染者は非感染者の約10倍のリスク

ピロリ菌は現在、胃がんの最大の原因と位置づけられています。

📄 根拠論文

Uemura N, et al. New England Journal of Medicine. 2001;345(11):784–789.
約1,500名を対象とした前向きコホート研究で、ピロリ菌感染者の胃がん発症率が非感染者と比較して約10倍に上昇することが示されました。

慢性炎症が続く環境では、胃粘膜の細胞が修復・分裂を繰り返すたびにがん化のリスクが蓄積します。除菌治療によりこの連鎖を断ち切ることで、胃がん発症率を有意に低下させられることが複数の臨床研究で確認されています。

🏆 ピロリ菌検査・除菌は最も費用対効果の高い胃がん予防

人間ドックや健康診断で「ピロリ菌検査」のオプションがあれば、迷わず選択することを強く勧めます。一度も検査を受けたことがない方は、消化器内科への受診から始めてください。

若者も無縁ではない──スキルス胃がんという見えない脅威

「胃がんは中高年の病気」という認識は危険な思い込みです。スキルス胃がん(びまん性胃がん)は、20〜30代の若年層にも発症します。

  • 胃の壁全体にがん細胞が広がる「びまん性浸潤型」で、粘膜表面に変化が出にくく内視鏡でも発見が困難
  • 腫瘤(かたまり)を形成しないため、バリウム検査でも見落とされやすい
  • 自覚症状が出にくく、気づいた時点で既に進行がんであることが多い
  • 5年生存率は15〜20%と極めて低い
  • 遺伝的要因や細胞修復の異常が関与しており、生活習慣を整えても防ぎきれないケースがある

大学病院の消化器外科病棟で、若くしてスキルス胃がんと診断された患者さんを目の当たりにしたことがあります。発見が遅れた理由のひとつは、「まだ若いから大丈夫」という周囲の思い込みでした。

スキルス胃がんへの唯一の対抗手段

現時点では、精度の高い内視鏡検査による早期発見しかありません。「若いから」「症状がないから」という理由で検査を先送りにすることが、最もリスクの高い判断です。

大腸カメラの重要性──症状ゼロで進行する沈黙のがん

食生活の欧米化を背景に、日本では大腸がんが罹患数第1位のがんとなっています(国立がん研究センター統計、2019年)。

大腸がんの最大の特徴は、初期症状がほぼ存在しないことです。定期健診の便潜血検査で陽性が出て初めて気づく、というケースが少なくありません。

ただし、大腸がんの多くは腺腫(ポリープ)が数年から10年かけてがん化するという経過をたどります。裏を返せば、ポリープ段階で内視鏡切除できれば、ほぼ100%の治癒が期待できます。

🏆 大腸がんは「早く見つければほぼ確実に助かるがん」

人間ドックで便潜血陽性が出たのに「なんとなく怖くて」大腸カメラを受けていない方は、今すぐ受診してください。症状が出てからでは遅い場合があります。

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実体験:私が2回胃カメラを受けて気づいたこと

発症のきっかけ──ある日突然の、逃げ場のない激痛

大学病院の急性期病棟で8年間働いてきた私が、自分自身が患者になるとは思っていませんでした。

きっかけは突然でした。何の前触れもなく、みぞおちを鋭く刺されるような激しい痛みが走ったのです。「しばらくすれば治まるだろう」と様子を見ましたが、痛みは引かず、むしろ波のように繰り返し押し寄せてくる。冷や汗をかきながら、「これはただの胃もたれではない」と直感しました。

薬剤師として、その痛みのパターンが胃潰瘍・十二指腸潰瘍で起こりうる急性増悪に一致することは頭では理解できていました。しかしいざ自分がその痛みの中にいると、知識と体感の間に大きな乖離があることを思い知らされました。胃の痛みと不快感が続いたこともあり、数日後には職場の消化器内科を受診し、胃カメラを勧められました。

1回目の内視鏡(鎮静剤なし):診断の瞬間

初めての胃カメラは、鎮静剤なしで受けました。

内視鏡が喉を通過する瞬間の、強烈な嘔吐反射。抑えられない涙と唾液。「呼吸して」という医師の声に従おうとしても、体が言うことを聞かない苦しさ。数分の検査でしたが、正直「もう二度と受けたくない」と思いました。

しかし、その苦痛は検査後の一言で吹き飛びました。

「胃潰瘍があります。ピロリ菌がいる可能性が高いので採血で確認しましょう。万が一のスキルス胃がんの否定のために生検をしておきました。」

「見つかった」という安堵が、あの痛みと苦しさをすべて上書きしました。あの激痛を「そのうち治るだろう」と放置し続けていたら、と考えると今でも背筋が冷たくなります。生検の結果、がんは否定されましたが、採血でヘリコバクターピロリ抗体が陽性だったので、ピロリ菌感染が確定し、除菌治療が開始されました。

除菌治療の7日間

ボノサップパック400を処方され、朝晩2回・7日間の内服が始まりました。患者さんに「飲み切ることが大事ですよ」と伝えてきた立場として、自分が副作用の下痢に耐えながら飲み続けるのは、ある意味で必要な経験でした。処方箋の向こう側にある「7日間の現実」を、初めて身体で理解しました。

2回目の内視鏡(鎮静剤なし):患部の確認

除菌終了から約2ヶ月後、確認のための2回目の内視鏡を受けました。2回目も鎮静剤なしでの検査でしたが、1回目の経験があったぶん、身体の力の抜き方や呼吸のタイミングがわずかにつかめていました。それでも嘔吐反射と涙は止まりませんでした。ピロリ除菌結果は尿素呼気試験で確認しました。

結果は一次除菌成功・胃潰瘍の改善。自分の胃が映る画面を見ながら、「あの激痛があったから、今ここにいられる」と素直に思いました。もし「痛みが引いたからもういい」と受診をやめていたら、この確認の場は訪れなかったかもしれません。

🏆 大学病院薬剤師として得た気づき

薬剤師として除菌療法の機序や成功率は知っていました。しかし患者として2度の内視鏡を経て初めて、「見て・診断して・治療する」という一連の流れが、どれほど確かな安心を生み出すかを実感しました。知識と体験は、別物です。だからこそ、体験した者として伝えます——受けてください。

内視鏡検査が「命を救う」4つの理由

# 理由 詳細
微小病変の直接確認 CTや血液検査では見落とされるミリ単位の変化を、粘膜表面から直接視認できる
診断と治療の同時完結 ポリープ切除・組織採取(生検)を検査中に実施でき、別途手術が不要なことも多い
広範囲・多疾患を一度に観察 がん・潰瘍・炎症・ポリープなど消化管疾患のほぼ全てを一度の処置でカバー
経過観察の基準点になる 「異常なし」という所見が次回比較のベースラインとなり、変化の早期察知につながる

「見て、取って、調べて、治す」を一度に行えるのは、現時点で内視鏡検査だけです。

費用・受診タイミング・クリニックの選び方

保険適用について

自覚症状があり、医師が診断上必要と判断した場合は健康保険(3割負担)が適用されます。

検査内容 自己負担額の目安 備考
胃カメラ(観察のみ) 約3,000〜6,500円 初診料・鎮静剤の有無で変動
胃カメラ+生検・病理検査 約8,000〜12,000円 組織を採取し詳しく調べる場合
大腸カメラ(観察のみ) 約5,000〜8,000円 初診料・検査薬代を含む
大腸カメラ+生検・病理検査 約10,000〜16,000円 組織を採取し詳しく調べる場合
大腸カメラ+ポリープ切除 約20,000〜35,000円 ポリープの数・大きさで変動

私自身の初回(観察+生検・病理検査込み)の自己負担は約10,000円でした。

今すぐ受診を検討すべき方

以下に一つでも当てはまる場合、症状の有無にかかわらず早期受診を強く勧めます。

  • 40歳以上で、一度も胃カメラを受けたことがない
  • ピロリ菌感染の既往がある、または一度も検査を受けたことがない
  • NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェンなど)を長期的に服用している
  • 慢性的な胃痛・胸やけ・食欲不振・血便がある
  • 人間ドックや健診で便潜血陽性が出たことがある
  • 家族(特に一親等)に胃がん・大腸がんの既往がある

クリニックの選び方

消化器内科専門医、または消化器内科認定医が常駐する医療機関を選んでください。

消化器内科専門医は数百件〜1,000件以上の内視鏡経験を持つことが多く、挿入技術・観察精度ともに習熟度が高い傾向があります。大学病院で多くの内視鏡を見てきた経験から言えば、検査者の技量は苦痛の大きさと発見精度の両方に直結します。「どのクリニックでも同じ」ではありません。

💡 セデーション(鎮静剤使用)を選ぶ場合の注意点

  • 当日は車の運転・原則として業務ができない
  • 人間ドック休暇・健診休暇を活用してまとめて受診するのが現実的
  • セデーションにより検査中の苦痛は大幅に軽減される

病院薬剤師からの結論

胃がんも大腸がんも、早期発見であればほぼ完治できる時代になっています。その入口にある検査が、内視鏡です。

人間ドックや健康診断のオプションで迷ったとき、「苦しそうだから」という理由で外す選択が、最もリスクの高い判断になる可能性があります。大学病院の急性期現場で数多くの患者さんを見てきた薬剤師として、そして自身が患者として2回の内視鏡を受けた者として、一つだけ伝えられることがあります。

「見つかる」うちは、まだ治せる。

内視鏡は「苦しい検査」ではなく、安心を手に入れるための投資です。症状が出てからでは間に合わないことがある。だからこそ、今受けてください。

📋 この記事のまとめ

  • 内視鏡はミリ単位の病変を粘膜表面から直接確認できる唯一の検査
  • ピロリ菌除菌は最も費用対効果の高い胃がん予防。飲み切ることが最大の鍵
  • スキルス胃がんは若年層にも発症。有効な対抗手段は定期検査のみ
  • 大腸がんはポリープ段階で切除すればほぼ100%治癒が見込める
  • 40歳以上・ピロリ感染歴あり・消化器症状あり・便潜血陽性は即受診
  • クリニックは消化器内科専門医が常駐する施設を選ぶ
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ABOUT ME
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ヒロポンです。 新卒から大学病院で8年間勤務し、北海道移住➤転職して現在は企業薬剤師をしています。FIREを目指して資産形成をしており、世帯資産3700万円を突破。 転職や薬学部での経験、資産運用の経験を活かして薬剤師のキャリア・国家試験対策・資産形成に関する情報発信をしています!