薬剤師として働いていると、
一度はこんなことを考えたことがあるのではないでしょうか。
- このまま今の職場で働き続けていいのか
- 転職したい気持ちはあるが、失敗したら怖い
- 病院・調剤・企業、結局どれが正解なのか分からない
私自身も、病院薬剤師として働く中で、
同じような迷いを何度も繰り返してきました。
この記事では、
私の実体験(病院薬剤師 → 企業のDI業務)をベースに、
- 薬剤師がキャリアで悩む本当の理由
- 働き方ごとの向き・不向き
- 転職で後悔する人の共通点
- キャリア選択でブレなくなる判断軸
を整理します。
結論から言うと、
薬剤師のキャリアに「唯一の正解」はありません。
ただし、間違った考え方・判断の仕方は確実に存在します。
今転職しようか悩んでいる方にとって参考となる内容ですので是非ご覧ください。
目次
私の転職体験が「特別ではない」理由
私はもともと病院薬剤師として新卒から8年間働いていました。
仕事内容に大きな不満があったわけではありません。
それでも、
- 業務量に対して裁量が少ない
- 当直・残業を含む拘束時間の長さ
- 年齢を重ねた先の働き方が想像できない
こうした違和感が、少しずつ積み重なっていきました。
最終的に、私は
企業のDI(Drug Information)業務へ転職しました。
ここで強調しておきたいのは、
この転職が「珍しい成功例」だとは思っていないという点です。
重要なのは
「病院が悪かった」「企業が良かった」ではなく、
今の自分の価値観・体力・人生設計に
どの働き方が合っていたか
という 適合性の問題 だった、ということです。
👉実際の転職までの流れは、体験談で詳しく書いています
薬剤師キャリアで必ずぶつかる5つの壁
どの職場(病院)を選んでも、
薬剤師はほぼ確実に次の壁に直面します。
① 年収の頭打ち
- 昇給幅は限定的
- 役職がつかない限り大きく伸びにくい
私の元職場を含め、ほとんどの医療機関の給与体系に言えることですが、病院薬剤師の年収は薬局やドラッグストア、製薬メーカー(企業)と比較して低い傾向にあります。
この理由は病院の収入源が診療報酬という社会保険の枠で決められているからです。
病院では薬剤師が稼ぐことができる診療報酬が少ないのが実情であり、直接的に利益を生むことが難しいです。
医師や看護師のサポートによる業務効率化や医療安全の確保に貢献している一方で、経営者目線で見ると利益を出さない社員に見えてしまうわけです。
実際に病院は医師と看護師がいれば極論なんとかなります。
ほかの職種はその2職種をサポートするように存在しており、その2職種が稼いだ売り上げの一部をいただいている状態です(かなり穿った見方ですが)。
さらにその診療報酬は国によって決められているので、頑張ったから収益を増やせるなどと単純な話ではありません。
現に多くの病院が昨今の物価高と診療報酬の乖離による経営難に陥ており、2025年に倒産した医療機関は過去2番目だったそうです。
例えば、1件の手術をするのに人件費、薬剤費、医療材料、光熱費がコストになるとして、このすべてが値上がりしていたら残る純利益はわずかになります。
病院はこのわずかな純利益で設備投資(新機材導入、建物修復、人材の確保など)を行わなければならず、古くなった設備を変えられないまま運営を続けている医療機関も多いです。
このように病院の報酬獲得構造と昨今のインフレ、院内でのポジションにより薬剤師の年収は上がりにくいと考えられます。
役職についてはどの会社にも言えることかもしれませんが、病院によっては薬局長と主任が1名ずつでそれ以外は全員平なんてことはざらにあり、病院薬剤師には管理職ポストがそもそも少ないというのも年収が上がりにくい要因でしょう。
② 業務負荷と裁量の不均衡
- 忙しいが、決定権は少ない
- 責任だけが増えていく感覚
病院においてすべての決定権を持っているのは医師です。
薬剤師が何と言おうと医師がこうだ!と言えばそれに従わざるを得ません。
さらに年功序列が根深いので、部署内でも基本的に上司の言うことは絶対です。
これは医学的・薬学的にとかではなく働き方の話ですね。
指導料を多く取れ。残業はなるべくするな。当直・日直は月に2回はマストなど。
子供が生まれるまではこれでよかったですが、生まれてからはとにかく身体的・精神的に負荷が大きかったです。
また職場にもよりますが薬剤師は自己研鑽して当たり前という空気があります。
これは概ね同意できますし至極全うだと思います。
ただし、上述したように昇給が弱いので、自己研鑽して実力が付く→仕事を任せられる→責任が増えるのに給与が釣り合わないという構造になります。
薬学部生の指導も行いますのでやることと責任だけが増えていき給料が増えない(増えにくい)という厳しい状況となります。
③ 勤務拘束の問題
- 日直・当直
- 土日・祝日の制限
病院にもよりますが、一般的に急性期病院は24時間体制であり、常に薬剤師が勤務しています。
私の前職場では45歳以下くらいまで当直があり、若手は年末年始やGWも交代制で出勤させられました。
日直は休日に出勤することで、私の職場の場合、代休は無く残業代と言う形で処理されていました。
そのためお金が欲しい人はいいかもしれませんが、子供がいる人、体力が無い人にとっては非常に厳しい環境だったと思います。
有給も取りづらく、自分が休む場合はチーム内で代わりに病棟に行ける人を用意しつつ、ほかの人の勤務状況などを考慮する必要がありました。
私の職場は比較的若手の人数も多かったので当直と日直併せて月2回で済んでいましたが、人数が少ない職場の場合はこの頻度がもっと増えますのでより過酷になるでしょう。
④ 成長実感の欠如
- ルーティン業務が中心
- 年数=成長とは限らない
ここは本人の努力次第なので一概には言えませんし職場にもよると思います。
私自身は5~6年目までは日々成長していた実感がありましたが、それ以降は如何に業務を早く終わらせるか、ほかの人でもできるようにするかを考えるようになりました。
業務量の多さゆえに効率化する方に注力し始めたのです。
また、担当病棟ごとに専門的になっていきますが、チーム内で後輩などが代わりになるよう業務内容を言語化し、どこを見る、どういうことをするなど業務を細かく分けて共有しました。
自分が休みたいからと言うのもありますし、いずれ辞めるつもりだったので引継ぎと共有も兼ねていました。
上述したように、スキルを高めると仕事が増えます。
つまり成長すると仕事が増えるのです。
早くなる部分もありますが、気づくが故に遅くなるケースもあります。
絶対に見落としてはいけないポイントと努力義務の部分を分け、業務負荷が増えすぎないよう後輩の指導をしていました。
医療従事者と言うよりサラリーマンのような働き方にシフトした時点で臨床の薬剤師としては終わっていたのかもしれませんね。
⑤ 将来像が描けない
- 10年後、20年後の自分が見えない
あくまでも私の前職場の例です。
前職場は俸給表による昇給・昇格でした。
平薬剤師より上は主査という職位があり、主査〇種など数字が上がるにつれて位も上がっていく仕組みです。
薬剤部の場合、主査になるチャンスが出始めるのが早くて30代後半。
部長推薦と内部審査などを経て主査に昇格できます。
詳しい給与事情は分かりませんが、うわさで聞いた感じ給与は劇的に上がるものではないようです。
それよりも管理職としてのマネジメント業務、委員会参加などが発生し、仕事は明らかに増えていると思います。
そもそも自分がそうなりたいかというと全くそうではなかったですし、かといってあの職場で給与を上げるには昇格しかない。
そんな状況に限界を感じていたため、転職を決意しました。
昇格するかどうかはその職場への忠誠心が試されると思っています。
真の意味で薬剤部、延いては病院全体を良くしていこうという前向きな人材でなければその前に転職してしまうでしょう。
或いはほかの職場で上手くやっていく自信が無い、35歳を過ぎて転職時期を逃したみたいな人がずるずると居座るケースもあります。(実際に前職場にいた先輩の話)
働き方別|向いている人・向かない人
ここでは、あえて綺麗事を抜きで整理します。
病院薬剤師が向いている人
- 臨床そのものに強い価値を感じる
- チーム医療にやりがいを見出せる
- 忙しさや拘束を受け入れられる
向かない人
- 労働量と報酬のバランスを重視したい
- 生活リズムを安定させたい
調剤薬局薬剤師が向いている人
- 対人業務が好き
- 地域密着で働きたい
- 異動・転勤に柔軟
向かない人
- 業務の幅を広げたい
- 専門性を深め続けたい
企業薬剤師(DI含む)が向いている人
- 論理的に考える仕事が好き
- 夜勤なし・安定した生活を重視
- 医療を「仕組み側」から支えたい
向かない人
- 患者対応が仕事の中心でないと満足できない
- 目の前の臨床がないとモチベーションが下がる
転職で後悔する人の共通点
これは、立場が変わっても一貫しています。
後悔しやすい人の特徴
- 年収だけで転職先を決める
- 「今の職場が嫌」という理由しかない
- 自分が何を優先したいか言語化できていない
特に多いのが、
「とりあえず転職すれば何か変わるはず」
という思考です。
転職サイトのCMなどを見ているとほかの職場がとてもよく見えたりすることがありますが、何も考えずに転職するのはリスクが高いです。
よく年収アップのために転職するという話を聞きますが、それはあくまでも一部の優秀な能力の高い人の話です。
平均レベル程度の薬剤師の場合、大幅な年収アップや待遇改善は必ずしも見込めないことは理解しておきましょう。
かくいう私も平均的な薬剤師でしたが、都内の大学病院で8年務めたというところが評価されると高を括っていました。
北海道へ移住し給与水準が変わるので一概には言えませんが、年収維持どころか下げ幅を小さくしつつ働き方を選ぶのが関の山でした。
👉薬剤師の転職で後悔する人の特徴(※作成中)
キャリアに正解はないが、判断軸はある
私が転職を決める際に、
最終的に使った判断軸はシンプルです。
- この働き方を 10年続けられるか
- 体調を維持しながら働けるか
- 家族・将来設計と矛盾しないか
この軸で考えると、
「世間的に良い・悪い」という評価は
ほとんど意味を持たなくなります。
なぜなら最終的には個人の価値観にゆだねられるからです。
私は結婚と子供生誕を経て、自分はがつがつ仕事に向き合っていきながら家庭を維持できるほど体力的にも精神的にも余裕がないことに気が付きました。
頑張っている人を見て、こんな考え方の自分は甘えだと思う時もありました。
ただ、自分の人生の中で主役にできるほど仕事が好きではないという本心に気が付き、かつ子育ても社会的に立派な仕事だと思えたので、転職を機に仕事へ割く時間を減らそうと思いました。
結果的に、今は時間的・体力的にゆとりをもって仕事に取り組めており、プライベートも楽しめるほど充実しています。(年収は100万円ほど下がりましたが)
まとめ:迷ったら「自分に合うか」で考える
薬剤師のキャリアは、
- 努力すれば必ず報われる世界でもなければ
- 逃げた人が負ける世界でもありません
重要なのは、
自分の価値観・人生設計と働き方が一致しているか
この一点です。
このハブ記事では、
今後も以下のテーマを深掘りしていきます。
- 病院薬剤師のリアルな年収
- 企業薬剤師(DI)の実態(※作成中)
- 薬剤師の年収はなぜ伸びにくいのか(※作成中)
- 薬剤師が転職を考え始めるタイミング(※作成中)
👉 気になる記事から、ぜひ読み進めてみてください。