健康

夏は特に注意!ペットボトル証拠群の恐ろしさ(熱中症対策と正しい水分補給)

皆さんはペットボトル症候群という言葉をご存じでしょうか?今年も猛暑が続いており、水分摂取目的で様々な飲料を口にすると思います。普段何気なく飲んでいる飲み物によってペットボトル症候群は引き起こされる可能性があり、特に多くの飲料を摂取する夏は注意が必要です。この記事では、熱中症対策とペットボトル症候群について解説していきますので是非最後までご覧ください!

熱中症とは

熱中症とは、「体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こす病気のこと」を言います。(全日本病院協会HPより引用)

重症度によって3つの段階に分けられますが、最も重篤であるⅢ度では意識障害を伴い、場合によっては重い後遺症が残ることもあります。

全日本病院協会HPより引用

私の勤めている病院でも夏になると必ず熱中症で搬送されてくる患者がいます。

基本的に高齢者が多いですが、現役世代の人もちらほら見かけますね。

多くの方は精々Ⅱ度レベルであり、救急外来で補液を投与したり、バイタルチェックをした後に帰りますが、稀に入院して治療している方もいます。

入院に至る方のほとんどは持病(高血圧や糖尿病など)があり、熱中症を契機に脱水による急性腎障害などを引き起こした方であり、数日の入院を要します。

私の担当する腎臓内科・腎臓外科では、元々何らかの腎疾患を患っている人や腎移植後の人が熱中症による脱水で緊急入院してくることは珍しくありません。

元来健康な人でも熱中症になる可能性は十分ありますが、基礎疾患がある場合には熱中症のみならず併発する合併症についても注意が必要であり、健康な人以上に熱中症対策を心がける必要があります。

特に脱水は一撃で腎不全に至る可能性があり、通常、腎臓は一度壊れてしまうと元には戻りませんから、水分摂取は極めて重要です。

大切なのは早期発見と治療であり、Ⅰ度のような自覚症状が出た場合はすぐに冷却、水分、塩分摂取など応急処置を行いましょう。(定期的な冷却と水分・塩分摂取は症状が無くてもやりましょう)

ペットボトル症候群とは

さて、前項では熱中症には水分摂取が大切と述べましたが、暑い夏に増えやすい疾患としてペットボトル症候群というものがあります。

聞きなじみがないかもしれませんが、この病気はその名前に似合わず恐ろしいものです。

ペットボトル症候群は俗称であり、正式には清涼飲料水ケトーシス、ソフトドリンクケトーシスと呼ばれています(医学的には)。

そもそもケトーシスとはなんぞやって話なんですが、一言で言うと「糖尿病の人に起こる症状」の一つです。

小難しいことを話します。

まず、ケトーシスのケトとはケトン体(アセト酢酸、ヒドロキシ酪酸、アセトン)を指しており、通常ケトン体は体が飢餓状態になった時に生成される物質です。

飢餓状態とは糖質(ブドウ糖)が不足した状態であり、ケトン体は脂肪を分解してエネルギー源として利用されるために生成されて体内で利用されます。

そこまではいいのですが、このケトン体と言う代物は酸性物質であり、多くなりすぎるとアシドーシス(体が酸性に傾くこと)を起こしてしまいます。

これをケトアシドーシスと言います。

体内のpHは常にほぼ中性(pH7.35~7.45)で厳格に管理されており、この均衡が崩れることによって様々な不調を来してしまいます。

pHが少し酸性に傾く(pH7.2くらい)でも体調はおかしくなり、さらに酸性に進むと意識障害を起こしかねません。

ちなみに、ケトアシドーシスとは基本的に糖尿病患者の代表的な合併症の一つです。

ケトーシスとアシドーシスのやばさについて理解したところで、ペットボトル症候群の話に戻ります。

ペットボトル症候群とはずばり、高血糖が続くことによって急性糖尿病のような状態となり、ケトーシスに陥ることによって、最終的にケトアシドーシスに至ることを言います。

ペットボトルとかソフトドリンクというワードが出てくるのは、それらの飲料に含まれる糖質(ブドウ糖)の多さからきています。

暑くて喉が渇くと水分を摂取したくなりますが、その時に甘いドリンク(スポドリなども)を飲むと、血糖値が急激に爆上がり、それを是正しようとインスリンが分泌されます。

ここまでは食事を摂って血糖値が上がり、インスリンで下げるという一連の流れなのでヤバくはないのですが、これを何度も繰り返すことが問題なのです。

前提として、血糖値は急激に上げると体に毒です。

血糖値について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓

血糖値を急激に上げると膵臓は頑張ってインスリンを分泌し、血糖値を正常に保とうとします。

インスリンは細胞内にグルコース(ブドウ糖)を取り込ませるホルモンであり、人間の体内において唯一血糖値を下げることのできるホルモンです。(ここ重要です)

人間の生物としての歴史の中では、極最近になるまでは常に飢餓との闘いでした。

現に、野生動物は今も飢餓と闘いながら子孫を残すことに全力を注いでいますよね。

人間は農耕を生み出し、植物を従え、その植物を使って牧畜を行うことで食料の安定供給を可能にしました。

これは高度な知的生物である人間にしか無しえない所業であり、我々人間がここまで個体数を増やせた一番の要因です。

ですが、人間(動物)の体はそう簡単に進化できません。

長いこと飢餓と闘っていた人間の体は、エネルギーが不足した時の対策はばっちり準備できていましたが、エネルギーが余りまくった時の対策は現在もできていないのです

その成れの果てが糖尿病脂質異常症です。

人間の体内で働く多くのホルモンは血糖値を上げるために働きます。

なぜなら、血糖値が低いこと=活動できない=死となるからです。

ですが、血糖値が過剰になっている状態を何とかするなんて今までしてこなかったので対応できないんですよ。

インスリンの本来の働きは過剰になった糖を細胞内に送り込むのではなく、必要な糖を細胞内送り込むことです。

すなわち、細胞が糖をよこせと言ったらお腹が空き、食事を摂ることで糖を血液内に供給させ、インスリンを使って細胞内に送り込むのが正しい流れであり、有り余った糖質を細胞内にぶち込むことが仕事ではないわけです。

つまり、血糖値をぶち上げた状態を是正しようとしている時の膵臓はめちゃくちゃ疲弊しているというわけです。

つらいぜよ

ペットボトル症候群は短期間で何度も血糖値をぶち上げ、何度も膵臓に負荷をかけることで急性の糖尿病状態を来します。

糖尿病の話は別記事で書きますが、簡単に言うとインスリンの効きが悪くなったり、分泌自体が悪くなる状態です。

インスリンの作用が弱まってしまうと細胞内にグルコースを供給できなくなります。

そうなると、細胞としては困ってしまいますので、「そうだ!脂肪を分解してエネルギー源を生み出そう!」と考えて脂肪を分解し、ケトン体を生成します。(やっとケトン体出てきた)

そうして、ケトン体で何とかエネルギーを補っている中で、さらに甘いドリンクにより糖質が供給され続けているとどうなるか・・・

有り余った糖は糖化産物(AGEs)を生み出し、血管内皮や神経を傷害し、腎症、神経症、網膜症の糖尿病3大合併症を引き起こします。

さらに、細胞は大量のケトン体を生成してなんとかやりくりしようとしますから、ケトーシスからケトアシドーシスに至り、急性昏睡、意識障害などを引き起こします。

私の病院でも、特に夏場は甘い飲み物を大量に飲み続けた方がペットボトル症候群にて搬送され、入院することがあります。

治療としては血糖値を下げるためにインスリンを投与したり、内服薬でインスリン抵抗性を改善したりといわゆる糖尿病患者の治療を行います。

また、アシドーシスを是正するためにアルカリ(炭酸水素ナトリウムなど)を投与して体内のpHを正常化させます。

ペットボトル症候群は若年男性(15~30歳)に圧倒的に多く、特に肥満男性に多いとされています。

思い返すと搬送されてきたのは100㎏オーバーの男性が多かったと思います。

熱中症対策として、せっかく水分摂取を意識していたのに、それによって意識障害を起こしていては本末転倒ですよね?

特にスポーツドリンクは危険です。

甲子園で試合に出ている少年であれば大量の水分、塩分、糖分を必要とするのでまだいいですが、室内で過ごしている人にとっては糖質が過剰です。

過剰な糖質=ペットボトル症候群のリスクと考えてください

まあペットボトル症候群以前の問題ですが、過剰な糖分摂取は肥満、糖尿病などの生活習慣病の元になりますから、いつ何時も気を付ける必要がありますね。

熱中症に重要なのは水分、塩分(電解質)、少量の糖質

前項ではペットボトル症候群について長々と語ってきました。

医学的な話はもうええわ!と思った人もいるかもしれません。すみません。

ここからは、熱中症対策において重要となる水分摂取についてです。

有名な話ですので、知っているよという人は飛ばしてください。

前提として、熱中症対策において糖分はほとんど無意味です!(ちょっとあってもいいけど)

熱中症対策に必要なのは水分と塩分(電解質、ミネラルとも言う)です

いわゆるスポーツドリンクには水分と塩分が含まれていますが、それを補って余りあるほどの糖分が含まれています。

熱中症は体に熱がこもった状態であり、且つ水分・塩分が不足した状態ですから、糖分は関係ありませんよね?

運動をしている人であれば、エネルギー補給の側面もあるかもしれませんが、それはスポーツドリンクではなく食事から摂ればいいですからあまりいいものではありません。(長距離マラソン中とかの摂取であればいいですが・・・)

代表的なスポーツドリンクを例に挙げてみます。

アクエリアス®

日本コカ・コーラHPより引用

スポドリの代表とも言えるアクエリアスですが、その中身はこんな感じです

一番多いのは果糖ブドウ糖液糖というもので、名前の通り果糖とブドウ糖を液体にしたものです。(要するに糖分)

次に食塩とクエン酸ですね。

食塩相当量は100ml当たり0.1gなので、ボトル1本500mlで0.5gです。

バリン・ロイシン・イソロイシンなどの分岐鎖アミノ酸は気休め程度に入ってますね(笑)

注目の炭水化物は100ml当たり4.7gなので、1本500ml当たり23.5gです。

角砂糖で言うと7.1個分の糖があのボトルに入っています。恐ろしくないですか?

1日に必要な総糖質量は、消費カロリーの50~60%が妥当ですから、2000㎉の場合、1000~1200㎉分に当たります。

糖質は1g当たり4㎉ですから、糖質として1日250g~300gが妥当な摂取量となります。

1本23.5gとなると1日の摂取量のうち10%程度を占めており、それを短時間でぶち込むのですから体にいいわけがありませんよね?

しかも、運動していたら1本で終わることはなく、1.5Lくらい平気で飲むじゃないですか。

私は小学生のころサッカーをしていたのですが、夏は1L以上確実に飲んでいました。

半日(午前のみ)の練習で1L飲んだとすると、3~4時間の間に、糖質を47g摂ったことになります。

重要なのは短時間というところです。

糖質の量だけで言えばご飯茶碗中盛相当なのでそこまで驚くものではありません。

ただし、ご飯の場合は咀嚼、消化、吸収したのち血糖値が上がるのに対し、ドリンクの場合は猛スピードで消化管内を滑り降り、小腸でグルコーストランスポーターを経由して速やかに吸収されるため、血糖値の上がる速度が尋常ではありません。

なんども言うように、急激に血糖値を上げること自体が体に毒ですから、基本的にスポーツドリンクを始めとした糖質が多く含まれているドリンクは体に毒だということです。

じゃあ何を飲めばいいんだよってことですが、結論、水か無糖のお茶(特に麦茶)がいいと思います。

ミネラルの補給は塩飴、梅干し、塩を食べる(直で)がいいと思います。

麺つゆを少し適度に希釈して飲むのもおすすめですね。糖質が少な目ですが、塩分、出汁(アミノ酸)が入っていてしかも美味しいので私は好きです。

お茶もカフェインが入っている緑茶、紅茶などは利尿作用によって水分漏出のリスクがあるためあまりお勧めはできません。(もちろんコーヒーも)

麦茶は少量のミネラル(ナトリウム)も摂取できるため、優れた飲み物だと言えます。(私は夏以外でも毎日麦茶を飲んでいます)

熱中症対策としてよく言われる経口補水液(OS-1)ですが、あれは本来軽い熱中症になっている人に対して使用する飲み物であり、常用するものではありません(不味いし)。

OS-1は普通のスポーツドリンクよりも糖質も少なく、代わりにリンやマグネシウムなどの電解質が追加されています。

糖質が入っているのは水分の吸収を良くするためです。

糖質が入ることによって浸透圧が高くなり、より早く水分が腸管から吸収されます。

熱中症Ⅰ度の状態であれば最も適した飲料となりますが、対策の段階では不要です。(値段も高いですし)

Ⅰ度になった時用に常備しておくのはいいですが、普段からぐびぐび飲むものではないということは覚えておいてください。

手作り経口補水液

常用するものではないとお伝えしましたが、熱中症ではなく重度の嘔吐・下痢などによって水分を失っている時などにも経口補水液は有用です。

簡単に作れますので、もしもの時には作ってみてもいいと思います。

ただし、注意点を先に伝えておきますと・・・クソ不味いです。(当たり前ですが)

通常、経口補水液は美味しいものではありません。

場合によってはこれによって吐き気を催すかもしれません。(私は飲むのしんどいです)

ただ、作れるということを知っておくだけでも勉強になるので、レシピをメモっておくと役に立つかもしれません。

レシピ(1L用)

  • 水(一度沸かしたものが望ましい)       1L 
  • 食塩                     3g
  • 砂糖                     40g
  • レモン果汁など(なければ入れなくても可)   少々 

レモン果汁は入れると少しだけ飲みやすくなります。また、カリウム、クエン酸の補給にも役立ちますので絶対に入れた方がいいです。ライムとかでもいいです。

何度も言うようですが、熱中症対策は水分と塩分摂取+冷却です。

大量の汗をかいているのに水だけ飲んでいると低ナトリウム血症を呈する可能性もありますから、適度な塩分を摂取してください。

そして、水分摂取と塩分摂取をちゃんとしていたとしても、体に熱が籠ってしまうとどうしようもないので、熱が籠らないような工夫が最重要事項です。

クーラー代は絶対にケチるな

前項で述べましたが、熱中症対策には冷却(熱が籠らないようにすること)が最重要です。

いくら水分と塩分をしっかり摂っていても、炎天下でずっと動いていたら熱中症になります。(室内でもエアコンを付けなければ炎天下同様危険)

暑い日に外で活動する場合は、定期的に体を冷却する必要があり、私がサッカーをしていた時も、夏は試合の中で給水&冷却する小休憩が挟まれていました。それでも炎天下でサッカーをしていた時は寒気を感じる時もありました。(今思えば軽度の熱中症だったんですかね)

暑い日の屋外で気を付けるのは当たり前ですが、室内でも熱中症は起こる可能性があります。

ニュースなどで高齢者がエアコンがついていない部屋で過ごしていて熱中症になり搬送されたなんてやってますよね~

真夏だと室内でも30度以上は平気でいきますし、窓を開けていたとしても35度くらいになっていてもおかしくありません。

電気代が掛かるからとエアコンをケチるのはとても危険な行為です。

エアコンなんてつけっぱなしでも月1万円も掛からないですが、ケチって熱中症になったら医療費が数万円は掛かります。

体調も気分も悪くなるしいいことがありません。

地球環境(エコ)のことを考えて節約しているのであれば立派ですが、そうだとしても現代の夏の平均気温においてエアコンを使わないのは自殺行為です。

特に夏場は我慢せずにエアコンを使いましょう。

設定温度は諸説ありますが、私は27度でサーキュレーターを回すのが一番心地よいです。

0歳児がいるので、現在の我が家は室内温度計で27度以上にならないように適宜調節しながら使用しています。

室内環境を保つ重要性についてはこちらの記事をご覧ください↓

まとめ

今回は特に夏に気を付けるべき熱中症対策と併発する可能性のあるペットボトル症候群について解説してきました。

このブログを読んでくださっている意識の高い方は甘い飲み物をがぶ飲みしたりしないと思いますが、くれぐれも清涼飲料水には注意してください。

ちなみに人工甘味料の飲み物であれば理論上ペットボトル症候群は起こしませんが、人工甘味料自体が人体への影響がはっきり分かっていませんので、必要以上に摂らない方が無難です。

甘いものは基本的に体に毒だということは念頭に置いてください。

まだまだ暑い日が続きますが、くれぐれもご自愛ください。

ではまた

P.S 私は大の甘党のため、定期的にスイーツを食べています。

ABOUT ME
hiropon
初めまして。ヒロポンです。 私は大学病院で薬剤師をしています。 医療や健康についての情報発信をしたいと思いブログを始めました。 定期的に皆さんの健康に寄与する記事を更新しますので、よろしくお願いします。