地方移住を考えている薬剤師が、最初につまずくのは決まってこの問いです。
「仕事、どうする?」
家族の希望、子育て環境、都会疲れ——移住したい理由はあっても、手放せる気がしない「東京の仕事」。私もそうでした。都内大学病院に8年勤め、北海道への移住を決断したときの最大の不安は、転職先が本当に見つかるのか、という一点でした。
結果から言います。転職活動開始から内定まで約1か月。薬剤師の地方移住は、思っているより現実的です。
この記事では、2025年に都内大学病院を退職して北海道へ移住し、現在は企業薬剤師として働く私の体験を、移住費用の内訳・転職活動のリアル・年収の変化まで、包み隠さずまとめます。
ひろぽん|薬剤師(企業DI担当)
病院薬剤師8年→現在は医薬品情報(DI)業務に従事。東京から北海道へ移住し転職活動を実施。ファルマスタッフ・薬キャリ・ハローワークを併用し、最終的にハローワーク経由で現職へ転職。複数サービスを実際に使い比較した経験をもとに、薬剤師の転職戦略を発信。
📋 この記事でわかること
- ✅東京→北海道の移住にかかった費用(内訳つき・約70万円)
- ✅薬剤師の北海道転職活動のリアル(薬局・病院・企業の求人事情)
- ✅年収570万円→470万円、100万円ダウンの内訳と生活への影響
- ✅失業給付・再就職手当で約40万円を受給した流れ
目次
なぜ北海道に移住したのか
移住の直接のきっかけは、妻の「地元に帰りたい」という希望でした。妻は北海道出身で、子供が生まれたタイミングで「北海道で子育てがしたい」と話し合うようになりました。私自身も田舎の出身で、別に都会に憧れていたわけでも、都会でなければできないことがあったわけでもありません。それよりも、年々積み重なっていた都会への疲れが正直なところ大きかったです。
朝夕の満員電車、慢性的な渋滞、週末でも人混みが途切れない街。大学病院の仕事はやりがいもありましたが、8年目ともなればそれなりにハードで、体力的にも精神的にも「そろそろキャリアを変えたい」という気持ちが芽生えていました。
ただ、踏み切れない理由もありました。都内で転職すると「大学病院から逃げ出した」と思われそうで嫌でしたし、転職したら職場の人と日常的に顔を合わせる可能性もあります。そう考えると、転職するなら環境ごと変えるほうが気が楽だと思いました。家族の希望と自分のキャリアの節目が、ちょうど重なるタイミングでした。
北海道という選択肢は、妻の出身地という以外に特別な理由があったわけではありません。ただ、実際に移住してみると、自然の豊かさ・空気・食べ物・人のゆったりした雰囲気——都会で消耗していた自分には、これが想像以上に合っていました。移住先は北海道の中でも比較的都市機能が整ったエリアで、生活利便性の面では大きな不便を感じることなく暮らせています。
移住のスケジュールと費用
移住の流れを時系列で整理します。同じように動こうとしている方の参考になれば幸いです。
- 2025年3月末 都内大学病院を退職
- 4月上旬 北海道へ一度渡り、賃貸物件を契約
- 4月中旬 引越し業者を決めて荷造り開始
- 4月中旬 ハローワークへ行き、失業給付の申請手続き
- 5月中旬 移住(妻・子供は飛行機、私はフェリー)
- 5月後半 転職活動開始
- 6月下旬 職場確定
- 7月上旬 現職に入職
移住の方法として少し珍しいのが、フェリーを使ったことです。車を北海道へ持っていく必要があったため、大洗港から苫小牧港へ向かうフェリーに乗船しました。片道約18時間の船旅は、慌ただしかった数か月の締めくくりとして、妙に清々しい時間でした。北海道に着いた瞬間の空気感は今でも覚えています。
移住にかかった費用(約70万円の内訳)
総費用は約70万円でした。内訳は以下のとおりです。
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 引越し業者(東京→北海道) | 約28万円 |
| 賃貸契約関連(敷金・礼金・仲介手数料など) | 約20万円 |
| 家財・生活用品の購入 | 約10万円 |
| 妻・子供の飛行機代(片道) | 約2万円 |
| フェリー代(片道・車積載あり) | 約5万円 |
| 雑費 | 約5万円 |
| 合計 | 約70万円 |
引越し費用の28万円は、東京から北海道という長距離かつ荷物量が多かったことを考えると、複数社で見積もりを取った結果としては妥当な金額でした。フェリーは車を積載しての乗船で約5万円。飛行機と比べると時間はかかりますが、車をそのまま北海道へ持っていける点では合理的な選択です。
💡 給付金を活用すると実質負担は約30万円
失業給付と再就職手当を合わせて約40万円を受給できました。無職期間は約3か月でしたが、移住前から手続きを進めていたこともあり、お金の心配は一切しませんでした。給付金を差し引くと、実質的な持ち出しは約30万円ほどで収まった計算です。
⚠️ 失業給付の申請は退職前に動くのが正解
受給開始まで一定の待機期間があります。退職前にハローワークへ足を運んで手続きの流れを確認しておくことを強くおすすめします。
北海道での転職活動のリアル|薬局・病院・企業の三択
北海道での転職活動を始めて、最初に感じたのが「薬局の求人がとにかく多い」ということでした。
薬局求人は無数にある
都市部でも地方でも、調剤薬局の需要は安定しています。北海道も例外ではなく、ハローワークに登録されている薬剤師向け求人の大半は薬局でした。駅前の大手チェーンから、地域に根ざした個人薬局まで幅広い選択肢があります。「就職先が見つかるか不安」という方は、薬局でよければ心配はほぼ不要だと断言できます。
病院求人もそれなりにある
病院薬剤師としてのキャリアを続けたい方にとっても、北海道の求人はある程度存在します。地方の基幹病院や市立病院などで欠員が出ると、ハローワークや病院の公式サイトに掲載されます。都内と比べれば母数は少ないですが、「絶対に見つからない」という状況ではありません。経験者であれば選考でも優位に立てる印象でした。
企業薬剤師の求人は極めて少ない
これは正直に書きます。企業薬剤師を狙うなら、北海道は選択肢が非常に限られます。製薬メーカーや医療関連企業の拠点が都市部に集中しているのはどの地方も同じですが、北海道は特にその傾向が強いです。私は最終的に企業薬剤師として就職できましたが、条件が合う求人がたまたまあったという運の要素も大きく、「企業一本で探す」という戦略は北海道では難しいと感じました。
⚠️ 企業薬剤師を希望する方へ
北海道での企業薬剤師求人は極めて限られます。エージェントだけでなくハローワークへの登録・企業への直接応募も並行して行うことをおすすめします。最初から選択肢が限られることを前提に活動計画を立ててください。
ハローワークとエージェントの使い分け
転職活動ではハローワークと転職エージェントを併用しました。最終的な就職先はハローワーク経由でしたが、エージェントも情報収集として有効でした。エージェントは「北海道の給与相場」「どんな職場が求人を出しているか」を把握するのに役立ちましたし、面接対策のアドバイスをもらえた点もよかったです。
一方でハローワークは、地元に密着した求人が多く、条件交渉も直接できます。特に地方では、エージェントが持っていないローカルな求人がハローワークに集まっていることがあります。どちらか一方ではなく、両方使って情報を広く取るのがベストだと思います。
💡 筆者が使った転職サービス
- 転職エージェント(複数):給与相場の把握・面接対策に活用
- ハローワーク:最終的な就職先もここで決定
移住前に不安だったこと・実際どうだったか
仕事は本当に見つかるのか
移住前の最大の不安でした。結果は、転職活動開始から内定まで約1か月。思っていたより早かったです。都内大学病院での経験は、面接でそれなりに評価されました。「なぜ北海道に来たのか」という質問はどこでも聞かれましたが、家族の事情と正直に話すと納得してもらえました。
年収はどのくらい下がったのか
下がりました。これは正直に書きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 移住前(都内大学病院) | 年収 約570万円 |
| 移住後(北海道・企業薬剤師) | 年収 約470万円 |
| 差額 | 約100万円ダウン |
| 要因① | 北海道の地域給与水準が都内より低い |
| 要因② | 病院薬剤師→企業薬剤師への職種転換 |
この100万円のダウンには2つの要因が重なっています。北海道に移住しつつ病院薬剤師を続けていれば、ここまでの差にはならなかった可能性があります。逆に言えば、薬局や病院への転職であれば、給与ダウンの幅はもう少し小さく抑えられるかもしれません。
生活コストも大きく変わりました。家賃は都内と比べて大幅に下がり、食費も北海道のほうが安い印象です。通勤にかかる交通費もほぼかかりません。毎月の支出総額でみると、手取りが減った分はかなりの部分が吸収されています。
💡 年収ダウンと生活費の関係
「年収が下がる=生活が苦しくなる」とは必ずしも言えません。ただ、100万円の差は確かに大きいので、移住前に家計のシミュレーションはしっかりしておくことをおすすめします。
無職期間3か月はどうだったか
お金の面では問題ありませんでした。失業給付が入り、もともと資産もある程度あったため、焦って転職活動をする必要がありませんでした。精神的には、むしろこの3か月が必要だったとすら感じています。8年間走り続けてきたので、少し立ち止まる時間になりました。北海道の夏は短いですが、その分濃い。移住直後の初夏の北海道は、思いのほか気持ちよかったです。
北海道移住×薬剤師、向いている人・向いていない人
最後に、少し辛口に整理します。
向いている人
- ✅家族の事情や意向が動くきっかけになっている人。移住は一人の決断では難しいものです。家族が後押しになるなら、それは最大の原動力になります。
- ✅薬局か病院で働くことに抵抗がない人。この二択さえ許容できれば、北海道での就職は現実的です。
- ✅都会の密度に疲れている人。北海道は人口密度が低く、自然が近いです。これが合う人には本当に合います。
- ✅ある程度の貯蓄がある人。無職期間を焦らずに過ごすには、3〜6か月分の生活費の余裕があると安心です。
向いていない人
- ⚠️企業薬剤師にこだわる人。求人の絶対数が少ないため、希望通りにいかない可能性があります。
- ⚠️都市部でしか積めない専門性を追っている人。高度な専門病院でのキャリア形成を続けたい場合、北海道は選択肢が限られます。
- ⚠️人間関係やコミュニティを都市部に強く依存している人。移住は物理的な距離だけでなく、人間関係のリセットでもあります。
まとめ
移住して後悔はありません。むしろ、もう少し早く決断してもよかったとすら思っています。
薬剤師という資格は、地方移住において本当に強い武器です。どの地域に行っても需要があり、転職活動が長期化するリスクが低い。私の場合は1か月で仕事が決まり、給付金も受け取りながら移住の費用を賄えました。
「移住したいけど仕事が不安」と感じている薬剤師の方がいれば、少なくとも「仕事」については、都内よりむしろ気楽に考えてよいとお伝えしたいです。課題があるとすれば、企業薬剤師の求人の少なさと、年収水準の差をどう受け止めるかです。それさえ理解した上で動けば、北海道移住は思っているより現実的な選択肢だと思います。
🏆 この記事のまとめ
- 移住総費用は約70万円。失業給付との差し引きで実質約30万円
- 転職活動は開始から約1か月で内定。薬局・病院なら求人は豊富
- 年収は約100万円ダウンだが、生活コストも大幅に下がる
- 企業薬剤師の求人は少ない。希望する方は覚悟と準備が必要
- 薬剤師免許は地方移住の最強の武器
※この記事は筆者の個人的な体験に基づくものです。給付金の受給条件や求人状況は時期によって変化するため、最新情報はハローワークや転職エージェントにご確認ください。
