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「薬剤師はAIでオワコン」は嘘。ChatGPT・Claudeを使い倒すDI薬剤師が教える本当の生存戦略

薬剤師、オワコン」「AIに仕事を奪われる」——

最近こんな言葉を目にして、ため息をついたことはないでしょうか。

正直に言うと、筆者も最初は不安でした。DI業務なんて、AIにとって格好の餌食ではないかと。膨大な添付文書、ガイドライン、文献——それらを瞬時に処理できるAIが登場したとき、自分の居場所はどこにあるのかと、真剣に考えました。

でも今は、まったく逆の確信を持っています。

AIを使いこなす薬剤師は、これから最強になれる。

これはポジティブ思考でも現実逃避でもありません。ChatGPT PlusとClaude Proに毎月課金し、業務でもプライベートでも使い倒しているDI薬剤師としての、率直な実感です。

この記事では「AIと共存するための精神論」ではなく、実際に何をどう使っているかという具体論と、AIを使う上で情報のプロとして絶対に外せない注意点をお伝えします。

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ひろぽん|薬剤師(企業DI担当)

病院薬剤師を経て、現在は企業のDI(医薬品情報)業務に従事。ChatGPT PlusとClaude Proに課金し、業務・プライベートの両面でAIを毎日使い倒している現役薬剤師。

この記事でわかること

  • 現役DI薬剤師がChatGPT・Claudeをどう使い分けているか
  • AIが最も真価を発揮する「ゼロからヒントを探す」使い方
  • 情報のプロとして絶対に守るべきAI活用の注意点3つ
  • AIに奪われるのは「仕事」ではなく「作業」である理由

「AIは使えない」という思考停止から抜け出しましょう

「AIは嘘をつくから信用できない」——それは正しく使えていないだけ

AIに対するよくある批判として「ハルシネーション(幻覚)を起こして嘘をつく」というものがあります。確かにその通りです。AIは自信満々に間違いを言うことがあります。

しかし考えてみてください。「嘘をつくから使えない」は思考停止です。

車は事故を起こすから乗らない、とはなりませんよね。電子カルテはバグがあるから手書きに戻れとはなりません。どんなツールも、適切な使い方とリスクを踏まえた運用が必要なだけです。

💡 ポイント

AIのハルシネーションへの答えは「使わない」ではなく、「ダブルチェックする」ことです。これは薬剤師が最も得意とする思考回路ではないでしょうか。

「対人スキルさえあれば大丈夫」という逃げ

「AIには患者さんへの共感や寄り添いはできない。だから対人スキルを磨けば大丈夫」

この意見は間違いではありません。でも、片手落ちだと思っています。

患者さんや医療従事者が薬剤師を信頼する理由の一丁目一番地は、「この人は正確な情報を持っている」という信頼感のはずです。どんなに優しく寄り添っても、情報が不正確なら信頼は生まれません。

まず「情報処理の速度と正確性」で圧倒的な信頼を獲得し、その上に対人スキルが乗ってこそ本物のプロフェッショナルだと考えています。AIを使わずに対人スキルだけで戦おうとするのは、計算機を持たずに暗算だけで競うようなものです。

AIが最も真価を発揮する場面とは

筆者がAIを使い続けてたどり着いた一つの結論があります。

📌 筆者の結論

AIは「何も手がかりがないところからヒントを見つけるフェーズ」で最も真価を発揮する。

DI業務の現場では、エンドユーザーから受ける問い合わせは必ずしも情報が揃っているわけではありません。「この薬を飲んでいる患者に〇〇が起きたが、関係あるか?」——こうした断片的な情報をもとに、答えへの道筋を探っていくことが求められます。

筆者の場合、少ないヒントを手がかりにAIと対話しながら、仮説を立て、可能性を絞り込み、最終的な回答へとたどり着くプロセスを取っています。まるで推理小説の探偵とワトソンのように、AIと協力して答えを見つけていくイメージです。

重要なのは、「正解は一つではない」ということです。エンドユーザーが本当に求めているのは何か——その本質を見抜き、満足のいく回答を届けること自体が、情報を扱うプロとしての判断力が活きる場面です。AIはあくまでその過程を加速するパートナーであり、最終的な判断と責任は、常に自分自身にあります。

【実践】ChatGPTとClaudeを使い分ける「バディ・ワークフロー」

では、具体的にどう使い分けているかをご紹介します。

AI 主な役割 得意なこと
ChatGPT Plus 思考のパートナー 初動の探索・公的文書の要約・差分抽出
Claude Pro 言葉のプロ 文章校閲・読み手別の表現調整・クロスチェック

ChatGPT Plus:ゼロから答えへの道筋を探る「思考のパートナー」

ChatGPTを最もよく使うのは、問い合わせの初動フェーズです。

断片的な情報しかない状態で、「この状況から考えられる可能性は何か?」「どんな文献や情報源を当たるべきか?」——こうした「地図のない探索」をChatGPTと一緒に行います。

一人で考えていると、どうしても確証バイアスが働きます。「これが正解だろう」と思い込んだまま進んでしまうことがある。AIが別の角度から可能性を提示してくれることで、見落としや思い込みに気づけることが何度もありました。

また、公的資料の読み解きにも絶大な威力を発揮します。厚生労働省や各省庁が出す通知・通達・ガイドラインは、行政特有の言い回しや読み慣れない文体で書かれており、読み込むだけで相当な時間と集中力を消耗します。そのPDFをそのままアップロードして「要点を箇条書きでまとめて」と依頼するだけで、エッセンスを数分で把握できます。

さらに便利なのが、「前回版と最新版を両方アップして変更点だけをピックアップさせる」という使い方です。改訂のたびに全文を読み直す必要がなくなり、「どこが変わったか」だけに集中できます。薬事規制や安全管理の文書は改訂頻度が高く、見落としが許されない領域だからこそ、この使い方は特に重宝しています。

💡 具体的な使い方のイメージ

  • 「この添付文書のPDFを要約して、副作用と禁忌だけ抽出して」
  • 「昨年版と今年版のガイドラインを比べて、変更点だけ教えて」
  • 「この通知文を、薬剤師向けにわかりやすく噛み砕いて説明して」

業務だけでなく、プライベートでの情報収集や自己学習にも日常的に使っています。

Claude Pro:「言葉のプロ」として校閲・表現調整を任せる

ChatGPTが「情報処理と探索の速さ」に秀でているとするなら、Claudeが強いのは「文章の質と表現のコントロール」です。

医師向けの情報提供文書、患者向けの説明文書、上長へのレポート——読む相手によって、同じ内容でも言葉の選び方はまったく違います。この「言い回しの微調整」をClaudeに任せると、クオリティが格段に上がります。

「医師に対してではなく、薬の知識がない一般の方向けに書き直して」「もう少し丁重なビジネス文書の口調にして」——こういうオーダーへの精度が高い。

さらに、ChatGPTが出した仮説や要約を、Claudeにクロスチェックさせるという使い方もしています。異なる特性を持つAI同士を「AIによるAIの監視」として機能させることで、一つのAIを맹信するリスクを下げています。

プライベートでは、読んだ本の内容整理や、自分の考えを文章にまとめる作業のサポートにも使っており、業務とプライベートの境界なく、日常的なツールになっています。

AIを使う上で絶対に外せない3つの注意点

ここは読み飛ばさないでください。AIを活用する上で、情報のプロとして絶対に守るべきことがあります。

注意点① 社内情報・個人情報は絶対に入力しない

AIのチャットに入力した内容は、機械学習に利用されることがあります。有料版であれば学習に利用させない設定もできますが、そもそもブラウザ上に社内情報や患者情報を載せるべきではないというのが筆者の考えです。「設定で学習をオフにしているから大丈夫」ではなく、「載せること自体のリスク」を常に意識してください。患者情報、社内の未公開情報、取引先の情報——これらは一切入力しない。これは鉄則です。

注意点② 一次情報は必ず自分で確認する

AIが「この論文に書いてある」「この文献によれば」と示してくれた情報は、必ず自分でその一次情報を確認する習慣をつけてください。実際に、AIが存在しない論文を堂々と引用することがあります。その文献を根拠に回答を組み立ててしまったら、情報全体が崩れます。

💡 これは薬剤師の強みが光る場面でもあります

一次情報を読んで、その信頼性や文脈を正しく評価できるのは、医薬品情報のトレーニングを受けた私たちだからこそです。AIはヒントを出す。評価するのは人間——この分担が正しいあり方だと思っています。

注意点③ 「AIがそう言った」は言い訳にならない

最終責任者は、常に自分自身です。「AIに聞いたらこう言っていた」は、情報を扱うプロとして一切通用しない言い訳です。AIはあくまでも意思決定を支援するツールであり、その情報を選択・判断・責任を持って使うのは人間です。この自覚があるかどうかが、AIを「道具として使いこなせる人」と「AIに振り回される人」を分ける分岐点だと感じています。

結論:AIに奪われるのは「仕事」ではなく「作業」です

ここまで読んで気づいた方もいるかもしれません。

「AIに仕事を奪われる」と怯えている方は、実はAIが得意な「作業」を、自分の「仕事」だと思い込んでいるのではないでしょうか。

少し辛口になりますが、大事なことなので言わせてください。

文書を要約すること、情報を検索すること、定型フォーマットに情報を埋めること——これらは本当に「薬剤師にしかできない仕事」でしょうか?

薬剤師にしかできない本当の仕事とは、患者の個別の状況を踏まえた総合的な判断、医師への適切な提案、エンドユーザーが本当に求めているものを見抜く洞察力——そういったものではないでしょうか。

AIは「作業」を猛スピードでこなします。だからこそ私たちは、その分だけ「本当の仕事」に使える時間と脳のリソースを手に入れることができます。

📌 まとめると

AIへの適切な「分担」は、薬剤師としての価値を下げるどころか、薬剤師にしかできないことに集中するための解放です。浮いた時間で、新しい疾患領域の勉強をしてもいい。資産運用の勉強をしてもいい。家族との時間を増やしてもいい。「AIに仕事を奪われた」のではなく、「AIのおかげで人生が豊かになった」——そう言える未来が、今すぐそこにあります。

まとめ:まず1つのAIから始めれば、世界が変わります

今日からできること:まず1つのAIに触れてみましょう。

ChatGPTの無料版で十分です。一つの添付文書を貼り付けて「この薬の主な副作用を3つ挙げて」と聞くだけでいい。最初は粗削りな回答が返ってくるかもしれません。でもその粗削りさも含めて、「どこが使えてどこが使えないか」を自分の目で確かめることが、AIとの本当の協働への第一歩です。

情報のプロとしてのAI活用 3原則

  • 社内情報・患者情報は絶対に入力しない
  • AIが示した文献・情報源は必ず一次情報を自分で確認する
  • 最終責任は常に自分が持つ。「AIがそう言った」は通用しない

「AIは危険だ」と距離を置き続ける薬剤師と、AIを使いこなしながら自分の専門性を磨き続ける薬剤師——数年後、この二者の間にどれほどの差がつくか、想像してみてください。

AIを使いこなす薬剤師の未来は、決して暗くありません。むしろ、かつてないほど明るいと確信しています。

このブログについて

企業のDI薬剤師が国家試験・転職・キャリア・資産形成をリアルに発信しています

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※記事の内容は筆者個人の見解です

ABOUT ME
hiropon
ヒロポンです。 新卒から大学病院で8年間勤務し、北海道移住➤転職して現在は企業薬剤師をしています。FIREを目指して資産形成をしており、世帯資産3700万円を突破。 転職や薬学部での経験、資産運用の経験を活かして薬剤師のキャリア・国家試験対策・資産形成に関する情報発信をしています!