「手取りの何割を投資に回せばいいですか?」——投資を始めようとしている方からよく聞かれる質問です。
答えは「人による」ですが、それで終わっては何の役にも立ちません。この記事では、年収約550万円の薬剤師として5年間で個人資産2,300万円に到達した筆者が、実際にどう考えてどう実践してきたかを具体的な数字とともに書きます。正解は一つではありませんが、考え方の枠組みと実例があれば、自分なりの答えを出す手助けになるはずです。
📋 この記事でわかること
- 手取りの何割を投資に回すべきかの考え方と筆者の実際の割合
- ライフステージ別(独身・子育て・共働き)の現実的な投資割合の目安
- 医療従事者の給与水準で月いくら投資に回せるかの実例
- 「割合」より先に決めるべき「生活防衛資金」の考え方
- 投資割合を段階的に引き上げた筆者の5年間の推移
目次
投資割合を決める前に「生活防衛資金」を確保する
手取りの何割を投資に回すかを決める前に、まず確保すべきものがあります。それが生活防衛資金です。
生活防衛資金とは、急な出費や収入が途絶えた場合に生活を維持できる現金の蓄えです。投資に回す前にこれを確保しておかないと、相場が下落したタイミングで「生活費が必要だから売る」という最悪の判断をせざるを得なくなります。
🏆 生活防衛資金の目安
- 独身・単身:生活費の3〜6ヶ月分
- 既婚・共働き:生活費の6ヶ月〜1年分
- 子供あり・片働き:生活費の1年分以上
医療従事者は国家資格という強力なセーフティネットがあるため、他職種より生活防衛資金の水準をやや低めに設定しても問題ない場合があります。「最悪でも薬局や病院に戻れば働ける」という事実は、精神的な余裕を生み出し、投資の継続を支えます。
生活防衛資金が確保できたら、初めて「残りをどう配分するか」という投資割合の話になります。
よく言われる「手取りの20〜30%」は目安に過ぎない
投資の世界では「手取りの20〜30%を投資に回しましょう」という目安がよく言われます。これは間違いではありませんが、ライフステージによって現実的な数字はまったく異なります。
| 状況 | 現実的な投資割合 | 優先事項 |
|---|---|---|
| 独身・実家暮らし | 30〜50%も可能 | 固定費が低い今が最大のチャンス |
| 独身・一人暮らし | 20〜35% | 家賃・生活費を抑えながら積み立て |
| 既婚・共働き・子なし | 20〜40% | 世帯収入が高い時期に積み上げる |
| 既婚・子あり・共働き | 15〜25% | 教育費・保育費を見越した設計が必要 |
| 既婚・子あり・片働き | 10〜20% | 無理のない額を継続することが最優先 |
割合より「継続できる金額」が正解
手取りの30%を投資に回しても1年で止めてしまう人より、手取りの10%でも10年続ける人の方が、最終的な資産は大きくなります。「理想の割合」より「続けられる割合」を選ぶことが長期投資の本質です。
筆者の実際の投資割合|5年間の推移
年収約550万円(手取り月32〜35万円程度・病院勤務時は当直手当含む)という薬剤師の給与水準で、実際にどう投資割合を設計してきたかを公開します。
2021〜2023年:月5万円積み立てからスタート
投資を始めた2021年当初は月5万円のインデックスファンド積み立てからスタートしました。手取り月収に対する割合は約15%です。都内一人暮らし・奨学金月3万円返済という状況で、これが無理なく続けられる上限でした。
同時期に米国高配当個別株へも約40万円を一括投資しましたが、毎月の積み立ては投資信託の5万円のみで継続しています。
💡 最初の積み立て額は「少なすぎる」くらいでちょうどいい
月5万円は「少なすぎる」と思う方もいるかもしれません。しかし始めることと継続することが最も重要です。少額から始めて「投資は怖くない」という感覚をつかんでから増額する順番が、脱落リスクを最小化します。
この期間(2021〜2023年)の年間資産増加額はFX除きで年平均約270万円でした。うち投資リターンが増加分の相当部分を占めており、月5万円の積み立てでも複利効果が着実に積み上がっていることがわかります。
2024年:新NISA開始で月30万円に大幅増額
2024年から新NISAが始まったタイミングで、投資割合を大幅に引き上げました。月30万円・年360万円の満額投資です。手取り月収に対する割合は約85〜90%という水準で、給与だけでは賄えないため旧NISAや特定口座の資産を必要に応じて売却して種銭に充てています。
これは「手取りの何割」という概念から外れた特殊なフェーズです。資産が1,700万円規模まで積み上がっていたため、既存資産を活用して新NISAを一気に埋める戦略を取りました。通常の給与所得者がすぐに真似できる方法ではありません。
| 時期 | 月の積み立て額 | 手取り比率(目安) | 状況 |
|---|---|---|---|
| 2021年〜2023年 | 月5万円 | 約15% | 独身・一人暮らし・奨学金返済中 |
| 2023年(結婚後) | 月5〜10万円 | 約15〜30% | 共働き・生活費折半・第一子誕生 |
| 2024年1〜3月 | 月15万円 | 約45% | 新NISA開始・共働き継続 |
| 2024年4月〜 | 月30万円 | 既存資産も活用 | 世帯資産3,000万円超・満額投資へ |
| 2025年〜現在 | 月30万円 | 給与+資産売却で捻出 | 転職後・年収ダウンでも継続 |
医療従事者の給与水準での現実的な投資設計
薬剤師・看護師・医師など医療従事者の給与水準で、実際にどう設計するかのイメージを示します。
ケース①:独身薬剤師・一人暮らし(手取り月25〜30万円)
| 費目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 家賃 | 7〜8万円 |
| 食費(自炊中心) | 3〜4万円 |
| 光熱費・通信費 | 1〜2万円 |
| その他生活費 | 2〜3万円 |
| 生活費合計 | 13〜17万円 |
| 投資に回せる金額 | 月8〜12万円(手取りの30〜45%) |
独身・一人暮らしは資産形成の黄金期です。固定費が自分だけに抑えられるこの時期に、できる限り多くを投資に回すことが長期的に大きな差を生みます。月8〜10万円の積み立てを5年続ければ、相場環境にもよりますが600〜800万円規模の資産を形成できます。
ケース②:共働き薬剤師夫婦・子あり(世帯手取り月50〜60万円)
| 費目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 家賃・住居費 | 10〜15万円 |
| 食費(子供込み) | 6〜8万円 |
| 光熱費・通信費 | 2〜3万円 |
| 保育費・教育費 | 3〜6万円 |
| その他生活費 | 5〜7万円 |
| 生活費合計 | 26〜39万円 |
| 投資に回せる金額 | 月15〜25万円(世帯手取りの25〜45%) |
共働きでも子供がいると保育費・教育費が重くのしかかります。無理に割合を高めるより、夫婦それぞれが新NISAの積み立て投資枠(月10万円)を使い切ることを目標にする方が継続しやすいです。世帯で月20万円の積み立てができれば、10年で相当な資産基盤が構築できます。
投資割合を増やすための3つのアプローチ
「今の収入では投資に回す余裕がない」と感じている方に向けて、投資割合を増やすための現実的なアプローチを示します。
- 固定費を先に削る:通信費・保険料・サブスクリプションは一度見直せば毎月自動的に節約効果が続きます。月1〜3万円の固定費削減が、そのまま投資原資になります。変動費(食費・交際費)を削るより固定費削減の方が精神的に楽で効果が持続します。
- 昇給分・ボーナスは生活水準を上げずに投資へ:昇給やボーナスが入ったとき、生活水準を上げずにその分を投資に回すことで、気づかないうちに投資割合が上がっていきます。筆者も年次昇給のたびに積み立て額を見直してきました。
- ライフイベントが落ち着いてから増額する:結婚・出産・引っ越しなどの時期に無理に割合を増やす必要はありません。大型支出が落ち着いてから増額する方が継続リスクが低くなります。
投資割合を決める際にやってはいけないこと
- 生活防衛資金を削って投資に回す:急な出費や相場下落時に現金がなければ、最悪のタイミングで投資を売却せざるを得なくなります。生活防衛資金は投資の「外側」に置くものです。
- 他人の割合をそのまま真似する:SNSで「手取りの50%を投資しています」という投稿を見て焦る必要はありません。住居費・家族構成・収入水準がまったく異なる人の割合を真似しても意味がありません。
- 高い割合を設定して途中で止める:無理な割合を設定すると、生活が苦しくなって投資を止めるリスクが上がります。投資において「止める」ことが最大の失敗です。続けられる割合を選ぶことが唯一のコツです。
まとめ|正解は「続けられる割合」
📝 この記事のまとめ
- 投資割合を決める前に生活防衛資金(3〜12ヶ月分)を確保する
- 「手取りの20〜30%」はあくまで目安。ライフステージで大きく変わる
- 独身一人暮らしは30〜45%、子あり共働きは25〜45%(世帯)が現実的な上限
- 筆者は月5万円(15%)からスタートし、段階的に月30万円まで引き上げた
- 昇給・ボーナスは生活水準を上げずにそのまま投資へ回すのが最速の増やし方
- 正解は「高い割合」ではなく「続けられる割合」。止めないことが唯一のコツ
月3万円でも5万円でも、今日始めた一歩が5年後・10年後の資産を作ります。完璧な割合を探すより、今できる金額で始めることの方がはるかに重要です。
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