ロキソニンという薬をご存じですか?
世の中的にはさまざまな痛みに効く万能薬として認知されているかと思います。
ただ、その作用メカニズム、副作用についてはあまり知られていません。
本記事では、そんなロキソニンについて掘り下げて少し細かく書いていこうと思います。
ロキソニンとは
ロキソニンとは商品名であり、その成分名(本名)はロキソプロフェンといいます。
ロキソプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される薬であり、その中でも酸性のプロピオン酸系というものに細分されています。
プロピオン酸系にはかなりメジャーな薬として知られているイブプロフェンも含まれています。語尾がプロフェンと似ていますよね?
ロキソニンが痛みを抑える仕組み
ロキソニンがなぜ痛みに効くのか・・・
それは痛み(炎症)の原因となるプロスタグランジン(PG)という生体内生理活性物質の産生をブロックすることで、痛みそのものが発生するのを防いでいるというわけです。
PGは体にとって必要な物質ではありますが、過剰に産生されることで痛みという弊害を引き起こします。
PGの産生にはシクロオキシゲナーゼ(COX-2)という酵素が関わってくるのですが、ロキソニンはこのCOX-2をブロックすることでPGが作られないようにしています。
ロキソニンの副作用(代表的なもの)
薬には添付文書(以下文書)と呼ばれる説明書がそれぞれ存在しているのですが、この文書にはとんでもない数の副作用が記載されています。
それは臨床試験や販売後の副作用報告などで副作用情報がどんどん蓄積されていき、完全に因果関係が証明できないものも含まれているからです。
起こる確率の極めて低い副作用については気にしていてはきりがありませんし、気にしていると薬を飲むことすら拒絶してしまうと思います。
ここでは、教科書的であり、かつ、現場でも注意している副作用についてお伝えします。
- ・胃潰瘍
- ・腎障害
- ・喘息
【胃潰瘍】
ロキソニンを薬局などで購入するときに、薬剤師から「空腹時に飲まないでください」と言われたことはないですか?
比較的有名かと思いますが、ロキソニンは胃を荒らす可能性がある薬であり、特に空腹時ではそのリスクが高まるため、原則食後に内服することとされています。
病院で処方されるときにも、ムコスタ®(レバミピド)という胃を守る薬がセットで出されることが非常に多いです。
胃潰瘍のリスクを下げるためにも、空腹時の内服は避け、内服後30分程度は横になることも控えてください。
ちなみに、すでに胃潰瘍ある状態の人には使用できません。
【腎障害】
実は怖い副作用の筆頭です。
腎障害とは急性腎障害と慢性腎障害に分けられますが、ロキソニンのそれは急性に該当します。
急激な腎機能低下により、体の老廃物が排泄できなくなったり、ナトリウムやカリウムといった電解質のバランスが崩れることで全身状態に影響を及ぼします。
ロキソニンに限らず、NSAIDs(非ステロイド性鎮痛薬)と呼ばれる鎮痛薬による腎障害は私の病院でも年に数件見られますので、頻度は低いですがどなたでも起こり得る副作用です。
多くの場合、腎機能障害は可逆的(元に戻る)ですが、一部の方で腎不全に陥り、そのまま人工透析になってしまう方もいますので早期発見・治療が重要です。
特にリスクの高い人として、すでに腎臓が悪かったり、血圧が高く、降圧剤のACE阻害薬*やARB**といった薬剤を内服している方、心臓が悪く利尿剤を使用している方があげられます。3種類すべて使用している場合は極めて危険であり、鎮痛剤は別のものを検討することも必要です。
*ACE阻害薬:アンギオテンシン変換酵素阻害薬 **ARB:アンギオテンシン受容体阻害薬
【喘息】
鎮痛剤と喘息というとあまり結びつくイメージがないですよね。
ここでいう喘息は一般的な気管支喘息の定義とは少し異なります。
ロキソニンがなぜ痛みに効くのかという話のところでプロスタグランジン(PG)という生理活性物質がでてきたかと思います。
PGはもともとアラキドン酸という脂肪酸からCOX-2の働きによってPGへと変換されますが、この時に、一部のアラキドン酸はほかの酵素によってロイコトリエン(LT)という物質にも変換されます。
これはアラキドン酸カスケードといって、ググればすぐに出てきます。
LTはアレルギーの原因反応を引き起こす物質と知られており、咳喘息などの方では、このLTの働きを抑えるロイコトリエン受容体拮抗薬が処方されることが往々にしてあります。代表的なのがモンテルカストやプランルカストというお薬です。
なんとなくお気づきかもしれませんが、ロキソニンによってCOX-2をブロックすると、本当はPGに変換されるはずだったアラキドン酸が余ってしまい、その結果LT合成の材料として使われてしまい、大量に作られたLTによって喘息などのアレルギー症状を呈する場合があります。
ロキソニンを使ってはいけない人
- 以前にロキソニンを飲んでアレルギーが出た人
- 妊婦(後期)
- 現時点で胃潰瘍がある人
- 肝臓・腎臓・心臓が著しく悪い人
- アスピリン喘息の既往がある人
- 重篤な血液の異常がある人
ざっと見た感じ、そりゃ飲んじゃだめだよねって感じですよね。この中で「アスピリン喘息の既往がある人」という文言が最もイメージがつきにくいかと思います。
アスピリン喘息とは、大昔(誇張表現ですが)に痛み止めとして汎用されていたアスピリン(現在は川崎病や抗血小板薬として使われています。)によって喘息を生じることです。
メカニズムとしては副作用のところでお話しした通りで、アスピリンもCOX-2を阻害してPGの生成を抑えますから、LTが大量に産生されて喘息に至るということです。
メカニズムから考えるとみんな喘息になるじゃんと思うかもしれませんが、ほとんどの人は大丈夫ですよね?
それはLTに対しての過敏性には個人差があるからです。
ロキソニンを飲んだら皆さんの体の中でLTができますが、それによって喘息を引き起こす方は極めて少ないでしょう。
しかしながら、以前に医師からアスピリン喘息と言われた方は使用できませんのでご注意を。
まとめ
ここまで長々と書き連ねてきましたが、結論を申し上げますと、ロキソニンは非常に使い勝手がよく、優れた解熱鎮痛効果を有する薬剤です。
通常の用法は1回1錠1日3回ですが、痛いときだけ内服する頓服という使い方もできます。
湿布やゲル剤もあり、様々な形で私たちの痛みを和らげてくれるロキソニン。用法用量を守り、正しく使いましょう。
自分がロキソニンを使っていいかわからない人は、薬局やドラッグストアの薬剤師に必ず相談しましょう。