今回は当ブログで図らずも一番読まれている薬剤師に関する記事を書いていきます。私のブログの超サブ的テーマがまさかの一番ニーズがあるという何とも言えない状態ですが、ニーズがあるのであれば答えるのが私の役目ですので、私の知り得る限りの病院薬剤師に関する情報を解説していきます。病院薬剤師になりたい方、院内で何してるのか気になるという方には必見の内容となっていますので是非最後までご覧ください!
目次
前提
まず大前提ですが、今回お伝えする内容はあくまでも私の勤務している病院における働き方であるため、当たり前ですがすべての病院薬剤師が同じような業務をしているわけではありません。
ただ、病院薬剤師という大きな括りの中では業務内容はそう大きく異なることはないと思いますので、1例として紹介していきます。
以前別の記事で、「本当に院内にいる?意外と知られていない病院薬剤師のリアルな日常」という記事を公開していますので、そちらを読んでから本記事を読んでいただいた方が理解が深まると思いますので、ぜひそちらからご覧ください↓
↑こちらは主に中央業務について書いています。
今回は主に病棟業務について解説していきます。
補足情報として、私の病院の情報を少し書いておきます。
都内の大学病院 病床数500床以上 急性期病院(3次救急)
病棟業務
まず、病棟業務とは何なのかですが、これが中々言葉にするのが難しいです。
少し細かい話をしますが、興味のある方はお付き合いください。
まず、病院薬剤師が稼ぐことができるお金(診療報酬)と言うのは意外と少なく、薬局のように一人一人に薬剤指導ができるわけではありません。(してるところもあると思いますが)
そのため、処方箋を何枚さばいて調剤しようが売り上げなどが上がることは一切ありません。
そこで、病院では「病棟薬剤業務実施加算」という薬局では取ることのできない点数が存在します。
詳しく知りたい方はリンクを付与しているので、病棟薬剤業務実施加算の文字をクリックしてみてください。
これは、厳しい条件を満たした場合、週に1回入院患者さんから一律で120点(1200円)頂けるという診療報酬です。
私の病院は急性期病院なので患者さんの回転は速いですが、長期療養型の病院などは安定した収益になるでしょう。
病棟薬剤業務実施加算の厳しい条件とは、具体的に「病棟ごとに担当薬剤師を配置し、その薬剤師(補助者も可)が週に平均20時間以上かつ月に80時間以上担当病棟の薬剤管理業務に従事すること」となります。
そのため、中央業務をしている時間は担当病棟に従事していない時間とみなされるため、担当病棟のために仕事をした時間を細かく記録・集計し、この算定を取ってよい状態かを常に証明し続ける必要があります。
ただし、この診療報酬のすごいところは、直接薬剤指導などを行っていない患者さんからもいただくことができるという点です。
処方箋のチェック、医師・看護師からの相談などで間接的には関わっているのですが、直接話したりしなくても取ることができる算定のため、時間効率が良く、病院経営においては貴重な収入源となります。(私たちの給与にもなります)
ただし、GW、シルバーウイーク、年末年始なども上記の条件を満たす必要があるため、病棟に注ぐ時間を捻出するのが非常に大変です。
特に人数の少ない病院だと、病棟に時間を注ぐということは中央業務が手薄になるということですから、残業がマストになるでしょう。
ちなみに病棟薬剤業務実施加算はどの病院でも取れるわけではなく、施設基準もあり、上記の条件を薬剤部として達成できる環境が揃わなければ算定できません。
そのため、小さい病院で薬剤師がほとんど病棟に行かないようなところではそもそも取ることができません。(その分ほんの少し患者さんの入院に掛かる医療費が安くなります)
ただ、病棟薬剤業務実施加算は薬剤師の臨床現場での活躍のきっかけとなり、多職種と連携することで医療の安全性、有効性を高めたり、医師・看護師の業務負担軽減に役立つなど患者・医療従事者双方にとってメリットがある加算だと思います。
ただ、入院する側からしたら、会ってもいないのに120点取られている(自己負担3割なら360円)と思うと薬剤師なんかいらねえとかその分安くしろとかって思う人も一部いるかもしれませんね。(裏では処方のチェックとかしてるんですけど・・・)
病棟薬剤業務実施加算を取るための時間集計には項目が存在しており、どんな業務に何分要したかをざっくりと記録する必要があります。
細かい業務内容についてはこちらを見ていただければと思いますが、私の病院で主に時間として付けているのは以下のものになります。
- ①患者状況把握
- ②他職種からの相談応需と情報提供
- ③持参薬の確認と処方提案
- ④新規開始薬剤の患者説明
- ⑤特に安全管理が必要な薬剤の投与量、流量計算など
- ⑥抗癌剤、高カロリー輸液の調製
- ⑦病棟薬品管理
- ⑧TDM関連(薬物血中濃度モニタリング)
- ⑨カンファレンス
- ⑩病棟業務日誌作成
私の病院では主にこれらをどの項目を何時から何時に行ったと記録しています。(Excelで)
もし、監査(外部から違法な保険請求をしていないかのチェック)が入った場合には、これらの情報を開示し、病棟薬剤業務実施加算を取っている根拠とします。
項目を1つずつ見ていきましょう
患者状況の把握
①の患者状況把握ですが、これは現在入院している患者、当日または翌日以降入院してくる患者の情報を電子カルテを用いて調べる時間です。
当たり前ですが、どんな疾患で、どんな治療をしに来るのか、どんな既往歴があってどんな薬を飲んでいるのか、今回行う治療と相性が悪いものはないかなどを予めチェックしていきます。(これが結構時間掛かります)
担当病棟が取り扱っている診療科は基本的に固定されているので、慣れてくればこの疾患で来る=この治療をする=この薬に気を付ければOKなど瞬時に判断できますが、ベットコントロールなどの関係で普段扱っていない科が来ることもあります。
その時は情報収集に時間が掛かりますし、なんなら普段そこを担当している薬剤師に教えを乞います。
患者さんの状態によって情報収集に掛かる時間は異なりますが、病棟業務の内占める時間の割合は比較的多いと思います。
他職種からの相談応需と情報提供
②は主に医師・看護師から相談を受けた場合に付ける時間です。
例えば医師からは、腎機能がこれくらいなんだけど抗生剤の量はどうしましょうか?とか、培養でこの菌が出たんだけどどの抗生剤にしますか?などですかね。(ほんの一例ですが)
あとは、処方の修正依頼なんかも医師から多いです。
基本的に一度処方したものは薬剤師が修正する仕組みになっているため、医師は患者の採血データなどを見て量を変えたり、薬を変えたりしたいと思ったら処方を修正する必要がありますが、勝手に修正できないので、こちらに依頼してくるというわけですね。
看護師からはルートが1本しかないんですけど、○○と××は同一ルートで投与してもいいですか?とかこの薬はなんの薬ですか?とか錠剤が飲みづらいって言ってるんですけどどうしたらいいですか?とかですかね。
いろいろ聞かれますが、医師と看護師が話をしていて「そうだ!薬剤師さんいるから聞いてみます!」とかいって突然聞かれたりもします。
院内PHSを持っているので、中央業務をやっている時にも病棟看護師や先生から電話が来ることはしょっちゅうです。
持参薬の把握と処方提案
③は病棟業務時間の多くを占める業務です。
持参薬とは文字通り、入院時に持参する薬であり、元々他の病院やクリニックで処方された薬剤が主になります。(当院処方の薬剤ももちろんあります)
持参薬はほかの病院で処方されたものなので、主治医が隅々まで把握することが困難です。
そんな持参薬を把握し、電子カルテに内服情報を取り込むことで、医師に現在内服している薬剤を伝えるのが持参薬確認業務です。
持参薬が現在の病態にそぐわない場合も多々あり、入院時にそういった薬を抽出し、薬剤師から医師へ報告し、「こういう理由で使うべきではないと思うのですが中止しますか?」と確認し、最終的には医師の判断で中止または継続になります。
医師も全ての薬の用法や適応を把握しているわけではありませんし、そもそも薬の名前を見てすぐに何の薬なのかという判断がつかない場合もあります。
薬剤師は持参薬確認の時に、なんの薬なのか、院内ではどの薬に相当するのかの情報を添付し、医師がその薬を続けるべきなのか、止めるべきなのかの判断の手助けをします。
また、入院時に持参薬を忘れるまたは残が極少で院内で代替薬を処方する必要がある場合に、院内の採用薬で代替すると何になるかなどの判断も薬剤師が行います。
新規開始薬剤の説明
④は主に副作用が出やすい(出た時に重篤になる可能性がある)薬剤について行います。
特に、抗がん剤、免疫抑制剤などは今後しばらくは続けている薬になりますので、注意点を細かく説明し、初期症状に気づいたときはすぐに連絡していただくなどの説明を行っています。
ただ、私の病院では患者数も多く、日々こまごまとした新規開始薬が出てくるので、例えば下剤や降圧剤、高脂血症治療薬など比較的副作用の少ない薬の説明までは手が回っていない状況です。
そういった薬に関しては、医師・看護師から「血圧の薬始めましたよ!」と患者さんに伝えて終わるケースがほとんどです。
施設によっては新規開始薬の指導は全て薬剤師が行っているところもあるかもしれませんが、実際は厳しいのが現実です。
特に安全管理が必要な薬剤の投与量、流量計算
この業務はかなり重要度の高い業務の一つです。
特に安全管理が必要な薬剤とは主に抗がん剤(化学療法)のことを指します。他には特殊な薬剤、血中濃度管理が必要な抗生剤(バンコマイシン、テイコプラニン、ゲンタマイシンなど)があり、投与設計(その患者の身長・体重・腎機能、肝機能、基礎疾患など)を考慮して適した投与量、投与速度、血中濃度測定スケジュールなどを決定し、医師に伝えるという業務となります。
前提として、抗がん剤の種類の決定、処方(投与量決定)は全て医師が行うのですが、必ず薬剤師のダブルチェックが必要になります。
抗がん剤の多くは殺細胞性薬剤と呼ばれるもので、正常細胞に対しても影響を及ぼします。
抗がん剤による副作用の多くは正常細胞がダメージを受けることによって起こってくるものですので、抗がん剤治療と言うのは、如何にがん細胞だけを殺すか、正常細胞にダメージを与えないか、与えている気配を想起に察知し減量・休薬などの対応ができるかがカギになります。
抗がん剤を多く取り扱っている病院などの院内薬剤師は化学療法に携わっている人はかなり多いと思います。
抗がん剤はその扱いの危険性・複雑さから、管理を一元化する目的で「レジメン」と呼ばれる処方で管理されています。
例えば、食道癌でしばしば用いられるシスプラチン(CDDP)+5ーFU(F)の2剤の抗がん剤が使われる治療では、レジメン名はFP(5ーFU+CDDP)と呼ばれ、吐き気が出やすいシスプラチンが含まれているので、全症例でプロイメンド(ホスアプレピタント)、パロノセトロン、デカドロンと呼ばれる吐き気止めがいちいち処方しなくてもセットで付いてきます。
FP療法のレジメンについて気になる方はこちら(各医療機関毎に微妙に異なる点もあります)
投与する順番、各薬剤の投与速度などをいちいち医師が入れることなく、セットにすることでミスを減らしたり、業務の煩雑さを軽減したり、薬剤師、看護師の確認の手間を減らすこともできます。
ただ、レジメンと言うのはがんのステージ、患者の状態、手術ができるかなどによって選択できるものが多岐に渡り、遺伝子変異、HER2発現、放射線併用の有無など適応となるものが決まっています。
これらの複雑な事象を医師単独で管理・確認するのは不可能なので、必ず医師・薬剤師のダブルチェックを絶対条件として、それらをクリアした暁に患者さんへの投与に至ります。
医師も事前に必要な検査をうっかり抜かしてしまったりすることもあります。
これは医師が悪いのではなく、ヒューマンエラーの類になるので、人が仕事をする以上仕方のないことです。
システム化することで徐々にチェックの負担も減りつつありますが、それでもすべてをシステムで何とかすることは現実的にはできません。
医師・薬剤師がプログラミングのスキルを身に着けて、専用のプログラムを構築するとかでないと不可能です。
だからこそ、医師・薬剤師が協力して抗がん剤の管理などを行っており、安全かつ効果的ながん化学療法を行えています。
抗がん剤、高カロリー輸液の調製
次に抗がん剤、高カロリー輸液の調製です。
これは業務としては中央業務として行っていますが、病棟の患者さんの分を混ぜるので、その調製に要した時間は病棟時間としてカウントされます。
そもそも抗がん剤と高カロリー輸液の調製ってなんだよって感じですよね。
まず、高カロリー輸液とは中心静脈栄養と呼ばれる太い血管から高濃度の栄養剤を点滴する栄養療法に用いる輸液のことです。
その名の通り、カロリーが高く、消化器系の疾患、その他(精神・脳など)の疾患によって長期間食事が摂れない人に使用される薬剤です。
高カロリー輸液はカロリーを高くするために主に糖の濃度が高く、末梢(腕など)の血管から投与すると浸透圧により激痛が生じるため、中心静脈と呼ばれる太くて血流の速い血管から投与する必要があります。
ただ、中心静脈からの投与は感染症のリスクが高く、カテーテルを経由して細菌が入り込むと菌血症を引き起こし、致死的になりかねません。
高カロリー輸液は細菌たちにとってパラダイスみたいなものですから、無菌的な環境下で調製することが望ましく、当院ではクリーンベンチと呼ばれる無菌状態になった機械の中で調製を行っています。
※クリーンベンチについて詳しく知りたい方はこちら
さらに抗がん剤に至っては衛生面の管理もさることながら、調製者が抗がん剤(毒物)に被曝するのを防ぐ必要があり、安全キャビネットと呼ばれるクリーンベンチの上位互換の機械の中で調製する必要があります。
安全キャビネットとクリーンベンチの違いですが、主に換気システムが異なっており、クリーンベンチは陽圧換気(中から外に空気を出し続けてほこりや細菌などがベンチ内に侵入するのを防ぐ)なのに対し、安全キャビネットは陰圧換気(中で混ぜた抗がん剤が外に出ないようにキャビネット内で空気が循環している)という違いがあります。
そのため、通常抗がん剤はクリーンベンチで混ぜることはできず、安全キャビネットが必須となります。
調製の過程で抗がん剤が数滴こぼれたりすることはざらであり、オムツのような素材でできている吸水シートを敷いて、その上で調製します。
上述したレジメンの管理、抗がん剤の調製を薬剤部が担当することで、病棟で看護師が被曝するのを防ぎ、且つ医療の安全性を高めることができます。
流れとしては、前日までに医師がレジメンをオーダーする→薬剤部で調剤・監査する→当日の患者状態を医師が診察する(採血結果なども確認)→薬剤師が採血結果を確認する→医師が看護師に抗がん剤の投与を指示する→薬剤部へその旨の連絡が来る→調製する→調製後監査して看護師へ渡す→投与が開始されるといった感じです。
抗がん剤の投与にミスは許されないので、医師・薬剤師・看護師が協力してミスを防止する体制で治療を行っています。
病棟薬品管理
病棟薬品管理は主に救急カート薬、注射ストック薬、頓服薬(痛み止め、吐き気止め、下剤、眠剤など)の管理を行います。
救急カートとは、病棟で患者さんが急変(急に容態が悪くなること)した時に使用する蘇生用の薬剤や器具がまとまっているカートです。
急変時とは呼吸停止、心拍停止、血圧の急激な低下、意識喪失などであり、すぐに院内の救命医を呼ぶとともに、救命医到着までは病棟に居合わせた医師を中心として治療を行います。
薬剤師は直接その場で役に立つことはありませんが、あらかじめ救急カートの薬剤の期限チェック、必要数が足りているかなどを定期的に行い、期限が近いものを取り替えたりする業務を担っています(地味ですが)。
次に注射ストック薬ですが、通常、医師が注射薬を処方したら薬剤部で調剤(セット)をして病棟に上げるのですが、薬剤部で調剤している注射薬は基本的に次の日の分であり、当日の注射薬のセットは病棟看護師が行っています。
そのセットを行うときに使うのが注射ストック薬です。
病棟(診療科)ごとによく出る処方があるので、よく出る薬品をストックしておき、当日処方が出たら病棟ですぐにセットできるようにしています。
ただし、全ての薬品をストックすることはできないので、ストック薬にないものは看護師が薬剤部に取りに来ることになります。
注射ストック薬は毎日補充しており、これをすることによって看護師の業務負担を軽減することができます。
頓服薬は病棟で急遽使う内服薬であり、医師から事前に指示されており、例えば嘔気を訴えたらメトクロプラミド(テルペラン)を1錠飲ませてくださいとか、眠れないと言ったらベルソムラ15mgを1錠飲ませてくださいとか予想されることを予め指示し、必要に応じて看護師判断で内服させることになります。
頓服薬の中でも眠れないときに飲む眠剤は向精神薬に分類されているものが多いので、残数を薬剤師が管理し、減った分は適宜補充しています。
TDM関連(薬物血中濃度モニタリング)
まずTDMってなんやねんって話ですよね。
TDMとは、Therapeutic Drug Monitoringの頭文字を取ったもので、薬物血中濃度モニタリングのことを指します。
薬の中には、血中濃度(血液中の薬の濃度)を適切に管理する必要があるものがそれなりに存在しており、それらの特定の薬剤の血中濃度を管理するために投与設計(投与量、投与間隔、血中濃度測定タイミングなど)をするのが薬剤師の業務となっております。
代表的なものとしては抗生物質のバンコマイシンです。
バンコマイシンはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれる細菌の特効薬であり、多くの感染症に用いられます。(腸球菌にも使用されます)
ただ、腎機能障害、レッドネック症候群、血球減少など副作用も出やすく、感染症によって目標とする血中濃度が異なりますので目標血中濃度で維持させるためにモニタリングをする必要があります。
また、バンコマイシンは腎機能、体重によって細かな投与量調節が必要であり、腎機能が落ちている方(慢性腎臓病)の方でも、尿が出ているか否か、透析治療をしているのかなどで投与量・投与間隔が異なりますので、医師から投与設計の依頼がしょっちゅう来ます。
また、主に私が担当していることですが、臓器移植などに用いる免疫抑制剤(タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムスなど)は厳格な血中濃度コントロールが必要であり、拒絶を起こさない且つ副作用を最小限に抑えるためにも細かなモニタリングを要します。
ここで紹介した薬はほんの一部であり、TDMが必要な薬剤はたくさんあります。
病院の医師・薬剤師はTDMについて日夜考えているということをご理解いただけると幸いです。
カンファレンス
カンファレンスとは言わば合同会議のようなものです。
医師のみで行う場合や多職種で行う場合があり、チーム医療を行っている医療機関では医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)が症例についてみんなで話し合い、介入すべき点を見つけて然るべき治療を行います。
医師だけでは視野が狭くなったり、それぞれの専門分野の医療従事者が意見交換することでよりよい医療を実現させます。
世の中的には医師が絶対的な存在のようなイメージがありますが、医師は完璧ではなくすべての領域に精通しているわけではありません。(実際不可能です)
そのため、医師が治療の軸を決め、それに多職種が肉付けして治療を充実させていくという流れが合理的でありミスも減らすことができます。
患者の治療のゴールに向かって、こうした方がいいのでは?とかこの薬は一旦やめてもいいのでは?とか食事の形態を変えますか?など各々の職種から提案することもありますし、医師からどうした方がいいか?という質問(相談)が出て、それに対してみんなで考えるということもします。
患者の現在の治療の進捗状況、問題点(医学的な)などを炙り出し、それを解決すべく多職種で話し合うのがカンファレンスです。
薬剤師は薬の専門家という立場で参加し、副作用確認、代替薬、新規開始薬の提案などを行っており、病棟患者に対してのカンファレンスであれば、参加している時間は病棟業務としてカウントされるため、カンファレンス参加時間を病棟時間として付けてます。
病棟業務日誌作成
これは文字通り、病棟業務日誌作成に掛かる時間です。
基本的にExcelで時間の集計、いつ、どんな業務を行ったかを記録しており、そのExcelファイルに記録する時間となります。
結構細かく記録しているため、それなりに時間を要しますが、概ね10分程度で完了する業務です。
別途病棟に対して行っている業務
ここまで病棟業務日誌に記録する項目の解説を行ってきましたが、その項目の中に、「そのほか」というものがあり、上述した項目に当てはまらない業務を具体的な内容を記載して記録します。
例えば、病棟看護師向けに行う薬の勉強会などです。
病棟薬剤師の業務の一環として、他職種への薬に関する情報提供などを行うことがあり、担当している病棟の看護師向けに、その科でよく使われる薬剤、その他全般的によく使われる薬剤についての正しい使い方、副作用についてなどの情報提供を行っています。
全ての病院で行われているわけではないと思いますが、薬剤師の業務にDI(ドラッグインフォメーション)という業務があり、文字通り薬剤に関する情報提供を行うことが任務であるため、病棟全体の知識アップとそれによるミス低下、患者への医療の質の向上などに寄与しています。
病棟業務のやりがい
ここまで長々と病棟業務に関して書き連ねてきましたが、私が8年目の現在に至るまで病院薬剤師を続けてこられたのはやりがいがあるからです。
やりがいと言うのはその人の主観になるので、すべての人に当てはまるものではありませんが、薬剤師を目指して大学で勉強されている方ならある程度通ずるものがあると思います。
私が特にやりがいがあると思っているのは医師・看護師と協力して治療を行っているという一体感です。
なにより、医師・看護師から必要とされている感覚が私にとってはやりがいになりますね。
患者との距離感とかじゃないの?と思われるかもしれませんが、私はあまりコミュ力も高く無いので実際患者と話すこと自体はそこまで好きではありません。
大体はあらかじめ患者に関する情報を予習し、確認する項目を決め、自分が知りたい情報のみを聞き出す方法でコミュニケーションを取っています。
冷たいやつだなと思われるかもしれませんが、雑談とかしてると本当に業務が回らないので、いわゆる閉じた質問でテンポよくいかないと残業が確定してしまうので仕方がないのです。
それよりも、患者から聞き出した情報を整理し、医師に確認する項目を抽出したり、内服薬に関する注意点を看護師に報告したりする業務の方が私はやりがいを感じます。
また、医師から院内に採用が無い薬を院内の薬で代替する場合どの薬がいいかという質問を受けたりしたときはドーパミンが出ますね笑
自分の一存で薬が変わりますし、それに替えることで治療が円滑に進むと考えるとワクワクします。(もう8年目なのでそこまでのワクワクはないですが)
あとは現場のスピード感の中に自分も入り込んでいる時は楽しいですね。
緊急入院が入ってきて、医師は指示出しや検査オーダーを入れたりで大忙しだし、看護師は病棟に上がってきた患者の対応で大忙し、そんな時に、人知れず内服情報を確認し、継続にする薬などを電子カルテに入力しておくと、医師・看護師から感謝されます。
持参薬の確認などは医師より薬剤師がやった方が早いですし、院内代替薬なども瞬時に判断できますから合理的です。
医師もそれをわかっているので、できれば薬剤師に持参薬の確認をして欲しいな~と思っています笑
自分が頑張ることで、医師・看護師の残業が少しでも減れば仕事した甲斐があったってもんですね。
病棟業務・中央業務以外の業務
今回のテーマからやや脱線するので手短にしますが、病棟業務・中央業務以外にも薬剤師は動いています。(一部の人は)
私の場合、地域の市民に対する腎臓病教室という公開口座の薬部門を講演したりしています。
腎臓病は早期に発見し、少しでも悪化を食い止めることが何より重要であり、そのために必要な生活習慣、内服薬、食事などについて医師・看護師・管理栄養士・薬剤師がそれぞれ講演し、腎臓病に片足を突っ込んでいる人に向けて情報提供を行っています。
あとは、業務と呼べるかは微妙ですが、各種学会などで発表を行ったり、研究に携わったりなど各々で仕事(趣味)みたいなのをしている人もいます。(私も学会発表をしたことがあります)
薬剤部内での勉強会などで発表したりもしますし、知識や経験をほかの人に発表する機会はは意外に多かったりしますね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は病院薬剤師の詳しい業務内容と題して、細々といろんなことを書き連ねてきました。
想像以上のボリュームになってしまい、読むのが億劫になる人もいるかもしれませんね。
気になる項目があればぜひそこだけでも読んでいただけると嬉しいです。
今まで病院薬剤師についてここまで詳しく書いてあるブログなどを見かけたことが無かったので、これから病院薬剤師になろうと考えている人の参考になったのであれば本望です。
薬剤師のエゴサをすると要らないとか袋詰めしてるだけとかいろいろ言われていますが、病院内ではこんなことしているんだぞ!ということがこの記事を通して少しでも伝わったのなら幸いです。
この記事で紹介したもの以外にも各々の医療機関によって行っている病棟薬剤師業務があると思いますので、就活の病院見学の時に聞いてみるとより詳細な情報が得られると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。