今回は、度々効く効かない論争が勃発しているジェネリックの効能・効果について解説していきます。この記事を読むことによって、自分が先発品かジェネリックどちらを選ぶべきなのかがわかりますので是非最後までご覧ください!
最初に結論
最初にこの記事のネタバレですが、結論を申し上げておきます。
ジェネリックは・・・効きます!!
STAP細胞は・・・あります!みたいに言っていますが(笑)
そんなためて言うほどのことではありませんね。
当たり前ですがジェネリック医薬品はれっきとした医薬品ですし、実際にそれらを使って治療してしっかり治療効果を出して退院していく人を日々見ています。
効果は得られて、先発品よりも約5~6割くらいの薬価なので、定期的に病院に通われている方は医療費を抑える上でジェネリック医薬品は積極的に使用していくべきだと考えます
なぜ効かないと言われる?
ではなぜジェネリックは効かないと言われるのでしょうか?
この理由を私なりに分析して見ました。
- ①価格が安い=粗悪品みたいなイメージがあるから
- ②薬局でやたら勧めてくるから怪しい
- ③ジェネリックや後発品という言葉が劣化版みたいな印象を与える
- ④デマ情報が広がり悪いイメージを持っている人がいる
普段仕事をしていて考えられるのはこんなところでしょうか
確かに、薬学的知識が無い一般の人であればこれらの情報が入ってくればジェネリックを避けたくなる気持ちも分からなくはありません。
ですが、ジェネリックがどのように国から承認を受けて発売されているのか、先発品と違うところはどんなところなのか、なぜ安いのか、安全性は担保されているのかなどの情報をインプットすることによってジェネリックを使うことの合理性を理解することができ、ジェネリックに対する抵抗もなくなるのではないでしょうか?
以下の項目を読むことでそれらを理解できますので気になるところは読んでみてください!
なぜ安いの?
ジェネリック(後発品)がなぜ安いのかについて解説していきます。
まず、先発品の薬価がどのように決められているのかを知りましょう。
先発品の薬価設定
薬に薬価を付けるときには以下のステップで決められていきます。(かなりざっくりまとめてます)
①製薬メーカー(国内)が新薬の開発を行い、数々の治験を経て厚労省に申請
②厚労省にて、様々な評価項目(開発費用、世の中に対するニーズ、製造コスト、管理費用…etc)を加味して薬価を設定
③実際に発売されてから、薬の使用状況、効果などを加味して薬価を再設定(薬価改定)する(場合がある)
④通常20年間は特許があるため、ジェネリックメーカーは製造できず、その間に開発費用、利益をペイする
特に重要なのは①と④ですかね。
先発品というのは、莫大な費用・時間を掛けて研究開発されたのち、莫大な費用・時間を掛けて動物実験、臨床試験を経てようやく販売に漕ぎつけます。
私たちは普段3割負担とかですし、場合によっては高額療養費制度や更生医療、指定難病などで窓口での支払い自体はそこまで多くないはずです。
ですが、実際に掛かっている薬価はかなり高く、国民医療費のうち約21%が薬剤費とされています。
例えば1錠100円の薬を1日1回30日分処方すれば薬剤費は3000円ですよね?
でも私たちの負担は900円で済んでいます。
残りのお金は国民健康保険などの社会保険で賄われてます。
やや脱線しましたが、前提として薬剤費は馬鹿にならないということです。
そして、製薬メーカーというのはこの大きなうまみを得るためにとんでもない努力をしています。
販売までの労力だけでもとんでもないですが、販売後もMR(医薬情報担当者)を各医療施設に派遣し、情報提供(営業)をして売り込み、実際に使ってもらうところまでこぎつけることでようやく莫大な利益を上げることができます。
製薬メーカーが新薬を販売するまでにはとんでもない額の投資(数100~数1000億円レベル)が行われているということはご理解ください
その投資のリターンを回収するのが④の特許が効いている期間です。
通常と書いたのは、オーソライズドジェネリックといって、先発品メーカーからお墨付きをもらって20年経たないうちにジェネリックを販売する場合があるからです。
オーソライズドジェネリックはジェネリックが発売された時にシェアを取っておく目的で先行的に発売されます。
つまり、20年後に他のジェネリックメーカーが参入してきたときに、一足先に販売しておくことで、医療機関が先んじて採用してくれているので、安定して利益を上げることができるというわけです。
後発品の価格設定
では本題のジェネリックはなぜ安いのかです。
ずばりジェネリックの薬価は先発品の薬価をベースに設定されます。
相場は先発品の5~6割の価格
これは厚生労働省によって決められており、あくまでも相場となります。
例えば、新薬であっても、薬価改定によって発売時より価格が安くなっているケースがあり、先発品であっても1錠数十円という薬価がついている場合があります。
単純にそれの半分程度で設定してしまうと、単価が安すぎてしまい、ジェネリックメーカーの利益が出ないので、あくまでも先発品の薬価を勘案して決定しています。
例えば、超有名なロキソニン錠60mgの場合、先発品は「第一三共」であり、薬価は1錠当たり10.1円です。(散々改定されてこの値段になっている)
ですが、ジェネリックのロキソプロフェン錠60mgの薬価は「EMEC」「日医工」で1錠当たり9.8円とほとんど変わりません。
このように先発品の薬価が極めて安い場合は通常5~6割の薬価にはなりません。
このため、薬によっては先発品を選んでも自己負担額にほとんど影響しない場合があるということです。
そして、散々脱線しましたが、ジェネリックの価格が先発品の5~6割に設定されている理由は開発費用の安さにあります。
先に述べたように、新薬を開発するには莫大なコストが掛かります。
薬とはつまり化合物であり、最初はキー化合物という薬の元となる物質を見つけることから始まります。
これは目的の作用を得るために薬がどの受容体に結合するかや、結合してその受容体を刺激するのか阻害するのかなど化合物の構造次第で大きく変わってくるので超重要な部分です。
現代ではスーパーコンピューターなどを用いて膨大な計算処理を行い、候補となる化合物を探し出すという工程でキー化合物を選定しているようです。
候補の中からも、化学合成のしやすさ、化合物としての安定性、人体への吸収がいいか、人体への毒性など様々な厳しい項目をクリアした選ばれし化合物がようやく動物実験などに漕ぎつけます。
細胞、動物実験などを経て、毒性、有効血中濃度、効果・排泄経路など膨大なデータを採取し、安全性の部分をクリアできた後に臨床試験(治験)へと進みます。
治験とは未承認の新薬候補を患者あるいは治験参加者に使用し、様々なデータを取る試験のことです。
治験のバイトとか聞いたことありませんか?リンクを貼っておくので気になる方は見てみてください↓
サイトを見た方はわかるかと思いますが、治験のモニターというのはかなりの好待遇で報酬を得ることができます。
企業からしたら人体実験に参加してもらうのですから当然と言えば当然ですが・・・
ただ、最低限の安全性は確保されていますので、極めて安全な環境下での人体実験とお考え下さい。
多額の報酬金を支払って貴重なデータを採取したのち、次に実際の患者さんに対して臨床試験を行います。
臨床試験に参加するには様々な条件があり、治験コーディネーターという職業の方がそれらの管理業務を担っています。
既存の薬で効果が得られていない患者さんにとってはむしろ朗報になり得ますし、治験に参加した場合その治療に掛かる費用は製薬メーカーが負担しますので自分の持ち出しもありません。
このように先発品メーカーは莫大な費用を掛けてデータを収集し厚労省に提出して承認を受けるのです
それに引き換え、ジェネリックメーカーが販売までに行っている試験は極めて少ないです。
臨床試験は基本行いません。なぜなら化合物の効果、副作用、毒性などのデータは先発品メーカーが採っているからです。
ジェネリックメーカーが行うのは錠剤であれば薬剤の崩壊試験(水に入れた時のほぐれ具合)や溶出試験(水に入れた時に薬剤がどれくらい溶け出るか)など基本的に人体や動物を用いずにできる試験のみです。
そのため、研究室でできるレベルの試験しか行っていないのです。
私はこれを悪く言っているつもりは全くありません。むしろ合理的です。
あと、先発品にOD錠(口腔内崩壊錠)が無いものもあるので、そういう製品は治験という形で血中濃度(血液中の薬の濃度)を測定する場合もあります。
ジェネリック医薬品というのは、20年という特許期間に散々使用されて効果や安全性も確立されている薬剤(化合物)を用いて製造しているので、研究開発にほとんどコストが掛かりません
そのため、先発品の半額程度の薬価でも十分利益を出すことができます
実際効果はあるの?
前項で概ね述べましたが・・・効果はあります!
当たり前ですが。
ジェネリックは主成分のみ先発品と同じものにしなければなりませんが(当然ですが)、それ以外の添加剤(崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、賦形剤、安定剤など)はその限りではありません
そのため、お腹の中で先発品と全く同じ挙動を取るかどうかは誰にもわからないのです。
ただ、化合物のスクリーニング(選定)の時点で、化合物自体が吸収されるかどうかはすでに分かっています。
そのため、どんな形であれ、化合物が体内に取り込まれればほぼほぼ先発品と同様に血中に取り込まれ、然るべき点(作用点)に行ったのちに効果を発揮します。
崩壊試験や溶出試験において腸内環境を再現して試験していますので、その環境下で薬剤が正しく溶け出てさえいれば問題は無いのです。
化合物が腸管内から血液中に取り込まれるにはいくつかルートがありますが、いずれにしてもそれは先発品開発のスクリーニングや動物実験の時点で明らかになっています。
以上から、ジェネリック医薬品は効果があると考えます
なぜ薬局で変えようとしてくるの?
ではなぜ薬局で変えますかと執拗に言ってくるのでしょうか?
薬剤師は安くなるからと善意で言っているのでしょうか?
そのパターンも無きにしも非ずですが、正確には違います。
その理由は、ジェネリック使用割合が低いと診療報酬(調剤基本料)を下げられてしまうからです
使用割合が高いと診療報酬が上がるパターンもあります
多くの場合は後者を目的にジェネリックの推進を行っていると推測されます。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
ジェネリックにすればもらえるお金が増えるとなればやらないわけにはいきませんよね?
薬剤師だって給料を貰ってますから、ある程度は利益を追求しなくてはいけません。
ただ、このような背景には国の医療費がとんでもなく膨れ上がっていることが影響しています
超少子高齢化の現代では国民の医療費は年間で45兆円を超えます。
恐ろしくないですか?
このどんどん膨れ上がる医療費を野放しにしていると国が破綻しかねません。
そのため、国策として、医療費を下げるためにもジェネリック医薬品の使用を推進しているのです。
国産メーカーならまだしも、先発品メーカーには外資系企業も多いですから、それらのメーカにじゃぶじゃぶ薬剤費を払っていては国が持ちませんよね。
薬剤師としても、報酬が増えるからやっている側面もありますが、一医療従事者として、薬剤費の削減に貢献ことも国から求められている指名だと思いますし積極的にやるべきです。
薬剤師の責務として、ジェネリック医薬品の有効性、安全性情報の提供、患者への指導を積極的に行い、ジェネリックに対して抵抗感なく安心して使用してもらえるように努めるべきです
以上のように、薬局がジェネリックを勧めてくるのにはれっきとした理由があるということです。
ジェネリックが体に合わない人はいるの?
ジェネリックが体に合わない人はいます。
これは先に述べたように、化合物以外の添加剤が影響していると考えます。
先発品を使っていてアレルギーが出ていなかったのだとしたら化合物に対するアレルギーはありません。
ですが、後発品に変えたとたんに体調が悪くなったなどと言っている患者さんを稀に見かけます。(薬局実習の時に見かけました)
この理由としては添加剤に対しての耐性が無い(弱い)ことが考えられます。
添加剤というのは製剤の安定性や飲みやすさなどを保つために必須の物質であり、薬剤を流通させるためにはなくてはならない存在です。
ただし、先発品と同じにする必要はないため、そもそも添加剤が違うものだったり、同じ種類の添加剤でも購入しているメーカーが違っていたりと添加剤に関しては先発品と異なる点は多いです。
極端な例ですが、乳糖不耐症の人(牛乳を飲むと下痢する人など)が先発品の賦形剤(嵩増し)としてトウモロコシでんぷんが使われているものから、ジェネリックの賦形剤として乳糖が使われているものに変えた場合、下痢を起こす可能性が極めて高いです。
これはわかりやすい例を出しましたが、先発品からジェネリックへ変えた場合に体調不良になったりする人は一定数はいますので、もしそのようなケースがあったら主治医か行きつけの薬剤師に相談してみてください
横柄に言ったりするとクレーマーだと思われたりするので、あくまでも本当に困っている感じで伝えてみてください。
ちゃんと理由があれば医師だって薬剤師だって先発品を出しますよ
私たちはどうすればよいのか?
最後に、私たちはどうすればいいのかですが、私の一意見として、薬剤は原則ジェネリックにすべきだと思います。
もちろん、ジェネリックが無い薬品もあるためそれはそれですが、シンプルにジェネリックにすることで自分が払う医療費が安くなりますよね?
節約を推進している私としてはこの点は見過ごせません。
定期的に通院している人であれば薬剤費もバカになりませんし。
また、ジェネリックを使用することで少しでも国民の医療費を下げることが今の医療保険制度を維持していくために必要だと思います。
よくわからないけど先発の方がよさそうとか言う理由で安易に先発品を選ばないでください。
日本のこの素晴らしい医療保険を護るために、私たち一人一人ができることを少しずつやっていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
P.S
ちなみに私の勤務している病院のジェネリック率は80~85%程度でした。