健康

侮るなかれ!便秘は生活の質を落とします

今回は地味ですが多くの人々を苦しめている「便秘」について薬剤師の観点からその対処法や予防法について詳しく解説していきます。敵の特徴を知れば対処法が分かりますので、便秘にお悩みの方はぜひご覧ください!

便秘の定義

日本の便秘有訴者数は450万人いると推定されています。

割合は女性の方が多く、また高齢者の方がその数は多いとされています。

たかが便秘と甘く見られがちですが、放置することによって私たちの体に様々な悪影響をもたらします。

慢性便秘症診療ガイドライン2017では、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。

厚生労働省e-ヘルスネットHPより引用

上記に当てはまる場合は便秘症と診断されます。

便秘になる原因

便秘の原因には一次性二次性があります。

一次性とは主に生活習慣の乱れによって引き起こされるものです。

二次性とは何らかの疾患によるもの、内服している薬剤によるものなどが該当します。

一次性

  • 水分摂取不足
  • 運動不足
  • 食生活の乱れ(食物繊維の不足など)
  • 睡眠不足
  • ストレスなど

水分摂取不足とは腸管内に十分な水分が供給されないことによって潤いが失われ、便が硬くなったり、腸の蠕動運動が低下してしまう原因となります。

また、硬くなった便は排便しづらくなり、痛みを伴ったりしてさらに便秘を悪化させます。

運動習慣も実は便秘解消には重要です。

私たちは思っている以上に普段から動いています。

歩く、走る、立つ、座るなどの生活動作をするだけでも腸やその周辺の筋肉が刺激され、腸の動きが活性化します。

普段便秘ではなかった人が、入院を機に便秘になるという例は非常に多いです。

ここで言う食生活の乱れとは主に食物繊維の摂取不足です。

食物繊維は腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増やすことで腸内環境を整えます。

便の大部分が腸内細菌の死骸と腸管内皮細胞の死骸で構成されており、菌と細胞の良い循環を作るうえで食物繊維は非常に重要です。

食物繊維は主に野菜に多く含まれていますので、普段の食事であまり野菜を摂らない人は不足しがちな栄養素です。

二次性

  • がん
  • 糖尿病
  • 腸閉塞
  • 薬剤性

ここでは薬剤性の便秘について説明しておきます。

薬剤性の便秘とは主に「おなかの動きを止める副作用を有する薬剤」による便秘です。

多くの方になじみのあるものとしては、風邪薬などに含まれる咳止め、花粉症などに用いる抗アレルギー薬、下痢止め(整腸剤を除く)などでしょうか。

医療機関で処方される薬剤にはとんでもない数ありますが、かなりマニアックな話となりますのでここでは割愛します。

お腹の動きについて少し生理学的な話をさせてください。

ここで言うお腹の動きとは腸の蠕動運動(伸び縮みする様な動き)を指します。

腸の蠕動運動は自律神経である副交感神経がコントロールしています。

副交感神経が優位な状態、わかりやすく言うとリラックスしている状態に腸は活発に活動し、交感神経優位な状態、主に覚醒・興奮・活動的な状態では腸は動きが鈍くなります。

イメージとしては食後が分かりやすいです。

食後は消化にエネルギーを使うためほかの部分は脱力し、腸の動きに専念します。

腸は消化液を出して食物を消化・吸収し、不要なものを便として排泄するという生命維持にとって要となる仕事をしているので、腸が活発な時に他のことをしている余裕がないのです。

逆に、交感神経優位(戦闘態勢)の時に便のことなんてどうでもいいですよね?笑

極端な例えをするなら、ボクシングの試合中に便意が来てトイレに駆け込む感じですかね?

まあありえないですよね

腸の動きの中で便秘に影響してくるのは消化液(水分)の量、蠕動運動の活発具合でしょうか。

副交感神経はアセチルコリンという生理活性物質によってオンオフのスイッチがコントロールされています。

アセチルコリンが腸の受容体に作用すると腸は動き、受容体をブロック(阻害)すると腸の動きは止まります。

アセチルコリン受容体を阻害するお薬を「抗コリン薬」と呼びます。

抗コリン薬は下痢止めの代表的な薬です。

下痢とはつまりアセチルコリンが優位になることで腸の動きが活発になり、排便が促されている状態です。

それを止めるにはアセチルコリンを抑えればよいというわけです。

ただ、この抗コリン作用というのは残念ながら抗コリン薬以外でも出てくることがあります。

上述したように、総合感冒薬(風邪薬)などに含まれてる抗アレルギー薬の一部にはこの抗コリン作用を有する物があります。

花粉症などで1~2カ月抗アレルギー薬を継続する人も少なくないと思いますが、こういう時に便秘のリスクが出てきます。

別の病気で継続して薬を飲んでいる方もおられるかと思いますが、長期的に内服することで便秘発症のリスクが増してきます。

私も持病の腰痛に対して強めの痛み止めを継続内服していますが、教科書通りに便秘の副作用が出てきました。

幸い、続けているうちに次第に慣れてきて、今は便秘予防を意識することでほとんど出なくなってきました。

別の疾患で薬を継続内服している方で便秘にお悩みの方は、薬を受け取る際に薬剤師に相談してみてください。

便秘の原因となり得る薬を飲んでいれば、医師に問い合わせをして同系統で便秘の副作用が少ないタイプに変えてくれるかもしれません。

また、変えられなくても体質に合った下剤を教えてくれるでしょう。

便秘の悪影響

腸は体にとって非常に重要な役割を持っています。

その機能が低下することで様々な悪影響が出ますのでたかが便秘と侮ってはいけません。

免疫力の低下

腸管には多くの免疫細胞が存在しており、体にとって重要な免疫機構を司っています

便秘によって腸の機能が低下してしまうと病原菌に対して防御力が弱まってしまい、感染症のリスクが高まります。

メンタルの不調

腸管には免疫機能維持以外にも精神面を安定化させる働きがあります。

腸管では幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の合成量が圧倒的に多くセロトニンの産生が低下することでメンタル不調を起こす可能性があります。

腹部膨満感

これは単純におなかに便が溜まることで苦しくなります

それにより胃が圧迫されて食欲が減退し、栄養不足、食物繊維摂取量低下が生じ、さらに便秘が悪化する可能性があります。

切れ痔

長く留まった便は水分が抜けて硬くなり排便時に直腸や肛門にダメージを与えます

排便時に痛いから排便したくない→便秘になる→さらに痛いから排便したくないと負のループに入ってしまいます。

便秘の予防法

多くの場合は一次性であり、生活習慣の改善によって解消できるケースがほとんどです。

ですが、腸管の蠕動運動が低下している場合は、生活習慣の改善に加えて適宜下剤を併用することで排便をコントロールすることが大切です

水分摂取を意識する

持病などで水分摂取制限を受けていなければ、1日に1.5~2Lの水分摂取が望ましいとされています。

水分を摂取することによって腸管内の水分量が増加し、便の水分が増え柔らかくなります

さらに、水分によって腸管壁が刺激されて腸の蠕動運動が促進され、排便が促されます

食物繊維の摂取を意識する

野菜や海藻、きのこなど食物繊維が豊富な食材を摂取することで便の水分含有量増加が図れるとともに、食物繊維自体が腸を刺激し蠕動運動を促します

発酵食品の摂取を意識する

上記の食物繊維と併せて摂りたいのが発酵食品です

発酵食品は善玉菌と呼ばれる細菌が含まれており、腸内細菌のバランスを整えて便通を良くする効果が期待できます。

食物繊維は腸内細菌のエサとなり腸内環境を整えて体にとって必要な物質の産生を促す効果もあります。

適度な運動

運動することによって自律神経が整い、腸の運動を促進する副交感神経の働きが強くなることで便秘解消が期待できます。

また、腸管周辺の筋肉の緊張が和らぐことで腸の動きがよくなると考えられます。

手軽に購入できる市販の下剤

市販薬の下剤には大きく分けて塩類性下剤刺激性下剤があります。

塩類性下剤

酸化マグネシウムを主成分とした下剤です

浸透圧を利用して腸管内に水分を引き込み、便の水分含有量を増加させ排便を促します。

常用してもクセになりにくく、安全性も高いのでおすすめの下剤です。

刺激性と比べてお腹が痛くなりにくいのも特徴です。

ただし、高齢者や腎臓が悪い方には不向きです。

便が硬く、出しにくいタイプの便秘の方におすすめです。

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刺激性下剤

ピコスルファート、ビサコジル、センノシドなどが主成分とされている下剤です。

腸管細胞を刺激することで腸の蠕動運動を促進し排便を促します

連用することでクセになりやすく、内服を止めると便が出なくなる恐れがあります。

便は出ているけどすべて出しきれない、すっきりしない方におすすめです

常用ではなく、便が出ないことを自覚したときに頓服することでクセになるのを避けることができます

塩類性下剤と比べて腸を直接刺激するため、お腹が痛くなりやすいという特徴があります。

このスルーラックはビサコジルとセンノシドの2成分が含まれており、より強力に腸の蠕動運動を促進します。

刺激性下剤(浣腸)

グリセリンを主成分とした下剤です。

グリセリンとは油を分解したときにできる低級アルコールと呼ばれる物質です。

まあ少しドロッとしていてぬめりがあるような液体をイメージしていただければと思います。

肛門から注入することで便の滑りを改善し排便を促すお薬です。

どうしても出ないときに使用することをおすすめします。

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最後に

便秘はその名前やイメージから大したことが無いと思われがちです。

ただし、慢性化することで上述したような様々な悪影響を及ぼします。

数日間便が出ないだけでしょ?と甘く見ずに、毎日、少なくとも2日に1回は排便があるように意識して排便コントロールをしていくことが重要です。

幸いなことに、日本では市販薬でも非常に使いやすい下剤が数多く存在します。

良い生活習慣の継続と市販の下剤を上手く利用して便秘にならないようにセルフでメディケーションしていきましょう!

P.S

市販の下剤の多くはセルフメディケーション税制の対象です。

賢く活用してお得にお通じのコントロールをしていきましょう!

ABOUT ME
hiropon
初めまして。ヒロポンです。 私は大学病院で薬剤師をしています。 医療や健康についての情報発信をしたいと思いブログを始めました。 定期的に皆さんの健康に寄与する記事を更新しますので、よろしくお願いします。