今回はほとんど誰でも使える医療費控除であるセルフメディケーション税制についてわかりやすく解説していきます。お得な節税制度を使って資産形成の糧としましょう!この記事を読むことによってセルフメディケーション税制を利用するメリット・デメリットを知ることができます。
医療費控除とは
医療費控除とは、自分や家族のために支払った医療費などの負担額が年間10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超えた場合、その超えた金額について所得控除を受けられる制度です。
医療費控除の対象となるものは主に治療目的のものが認められます。
健康診断や検査費用(自ら希望して受けるもの)については原則対象外です。
つまり、世帯で年間10万円以上の医療費(自己負担額)が掛かっている場合、確定申告をすることで翌年の税金が減税されるということです。
医療費の中には、市販薬(OTC医薬品)の購入費用も含まれますので、ずっと健康で全く病院にもかからず市販薬も買わないという人でなければ利用できる可能性は低いと思います。
ここで重要なのは医療費が自己負担分のみということです。
ですが、家族全員分を合算できますので、歯医者の診療費なども含めると結構達成できる人がいるのではないでしょうか。
以下に対象となりうるものを挙げます(一例)
- ・妊娠・出産に掛かる費用
- ・介護サービス
- ・おむつ代(高齢者)
- ・医療用器具の購入またはレンタル費用
どうでしょうか?結構対象となるものが多いので、ここにすべてを書くことはできませんが、高齢の両親、祖父母などと暮らしていて、その医療費の一部を負担している人などはあっという間に条件は達成すると思います。
妊娠・出産に掛かる費用も対象なのはうれしいですよね。
妊婦検診の費用は保険適応外で、都道府県や市区町村から補助金は出ますが、経過次第で検査の回数が増えたりすると結構お金が掛かります。
大切なお子さんの健やかな成長のためにも、妊婦検診にお金を出し渋るなんてことはしたくないですよね。
出産にも一時金というものが支払われますが、ほぼほぼ出産費用の支払い(保険適応外)に使われますので、手残りはありません。
ですが、医療費控除を申請すれば減税された分は還付されますので確定申告によって手残りを増やすことができます。
条件によっては病院への交通費なども申告できる場合もありますので、とにかく医療行為を受けた場合は、その時の領収書(いつ、どこで、いくらかかったかの情報)か領収書が発行されない場合はメモでもよいので取っておくと、申告書類を作成するときにスムーズになります。
医療費控除の確定申告のやり方については専門として書かれているブログなどもあるため、検索すればすぐに詳しいやり方を知ることができると思いますので本記事では割愛します。
セルフメディケーション(セルメ)税制とは
まず税制の前にセルフメディケーション(通称セルメ)という言葉をご存じでしょうか?
言葉の通りではありますが、セルフつまり自分でメディケーションつまり治療することですね。
要は市販薬をうまく使うことであんまり病院とかにかからない人は税金面で優遇したるで!って話です。
現代における市販薬(OTC医薬品とも言います)の力はすさまじいです。
2021年の市販薬市場は推定8380億円(矢野経済研究所データより引用)とかなりの額ですね。
これだけ多くの方が市販薬を購入しているということですが、実際に確定申告でセルメ税制を利用している人はどのくらいいるのか気になったので調べてみました。
2020年厚労省が発表しているデータで少し古いですが、以下のようなデータがありました。
令和元年時
確定申告者 推定約2000万人 内セルメ税制利用者数約2万人(0.1%)
データ元は日本OTC医薬品協会で16万人を対象としたアンケート調査
全然使っている人おらんやん!ってなりますよね?僕は思わずツッコミました。
そうなんです。これだけ市販薬を購入している人がいるにもかかわらず、利用者が圧倒的に少ないんです。
その理由についてはアンケートでも推測されています。
まず、この税制は先に述べた医療費控除のサブ的な扱いで、医療費控除と併用することはできません。
医療費控除を利用する場合は市販薬購入費も合算すればよいので当然と言えば当然ですよね。
さらに、市販薬を12000円以上購入した場合(上限88000円)に対象となるため、あまり市販薬を購入しない層にはまず必要となりません。
さらにさらに、すべての市販薬が対象ではなく、対象となる商品が決められていることも利用者が少ない要因とされています。
どうでしょう。この制度。
12000円以上買うくらいだったら病院とかクリニック行ったほうが良くね?ってなりますよね。
私が薬剤師ではなく、一般人だったら間違いなくそう思います。
手間とか気にすることが多すぎますよね。
実際に症状が出てて辛いときに、セルフメディケーション税制対象商品を探して、そのレシートを保管して、年間12000円以上購入して、年明けに確定申告して減税されるのが数千円程度ならさっさと病院に行った方が、効き目の強い医療用医薬品を安価に手に入れられますし、医師・薬剤師の目を通った状態で服用できるならなおさら安心です。
この税制の狙いは人々の行動変容のようです。
要は、体調が悪くなったらすぐに医者にかかるのではなく、まずは市販薬で何とかしてみるっていう行動に移し、少しでも軽症で医療機関にかかる人を減らし医療費削減や医師の負担軽減につなげる狙いがあるようです。
アンケート調査では普及しない原因として以下のものがありました。
1位:対象商品を設けるな!
2位:手続きダルすぎるんよ!
3位 12000円とかそんな買わんし!でした。
僕の言葉で置き換えましたが大体こんな感じです。
またセルメ税制利用にはもう一つ要件があります。それは、「予防接種や健康診断などの健康にための一定の取り組みを行い、その領収書または結果通知書を保存している」です。
ダルすぎ~って感じです。
健康に気を付けていない、つまり、セルフで身体をメンテナンスする努力を怠っている人については認めませんということですね。う~んますます利用者が減るような条件。
なんだか対象者を増やしたくないようないともうかがえますが、ここまでの流れを踏まえて利用すべき人をリストアップすると以下のような条件になります。
- ・年間12000円以上市販薬を購入(セルメ対象商品に限る)
- ・全く病院に行かない(親の介護などにもお金が掛からない)
- ・健康診断または予防接種をしている
- ・確定申告をする
これだけの条件を満たしていくら控除されるんだい!って感じですよね。後の項でシミュレーションをしていますのでご覧ください。
対象医薬品
これまで、セルメ税制についてぼろくそ言ってきましたが、この記事はセルメ税制を推奨するものですので、ここからはいい面を述べていきます。
対象品目は厚労省HPに載っており、随時更新されています。
新たに追加されるものもありますので、今までダメだったものも調べたら対象となっている可能性もあります。
以下に対象医薬品のリンクを貼っておきますので、ご興味のある方は開いて、ご自分で普段使っている薬が対象かどうか見てみては?
■スイッチOTC
・PDF
対象品目一覧[PDF形式:471KB]
成分ごと品目数[PDF形式:49KB]
・EXCEL
対象品目一覧[XSLX形式:233KB]
成分ごと品目数[XSLX形式:13KB]
令和4年1月1日から、スイッチOTC以外にも対象となる商品が追加されました。令和4年以降新しく対象となる商品は以下の通りです。
■非スイッチOTC
・PDF
対象品目一覧[PDF形式:581KB]
成分ごと品目数[PDF形式:222KB]
・EXCEL
対象品目一覧[XSLX形式:277KB]
成分ごと品目数[XSLX形式:14KB]
リンク:厚生労働省HPより抜粋
実際のシミュレーション
それでは実際にセルメ税制を利用した場合いくら控除を受けられるのかシミュレーションしてみましょう。また、医療費控除と比べた場合控除額が高くなるケースもあるため、それも見ていきましょう。
まずはモデルケースを設定します。
【ロキソニンさん一家】
年収500万円のお父さん 専業主婦のお母さん 子供3人 両親は健康であり、花粉症や頭痛薬などをたまに購入する程度で、子供たちは突発的な風邪などで医療機関を利用。たまに歯医者も受診。
※所得税率は年収500万円なので20%で計算
【医療費控除を利用した場合】
市販薬購入費:30000円
医療機関での自己負担額:90000円
医療費控除の対象となる金額=110000円
控除される金額:110000円ー100000円=10000円
所得税:20%×10000円=2000円
住民税:10%×10000円=1000円
控除額合計=3000円
となるので、3000円の減税となります。
【セルメ税制を使った場合】
市販薬購入費:30000円
セルメ税制対象となる金額=30000円
控除される金額:30000円ー12000円=18000円
所得税:20%×18000円=3600円
住民税:10%×18000円=1800円
控除額合計=5400円
となるので5400円の減税となります。
このモデルケースだと2400円セルメ税制の方がお得となります。
どうせ確定申告するのならセルメ税制にした方がいいかなといった感じですね。
これはあくまでもモデルケースですので、ご自身がどの程度控除されるのかは様々な条件によって変わります。お得な方で申告しましょう。ちなみに、所得税はみなさんご存じ累進課税ですので、高所得者の方が差が大きくなることも注意が必要です。
- 市販薬の購入額が年間10万円を超えない場合はセルフメディケーション税制を利用(医療費控除ではそもそも対象とならない)
- 市販薬の購入と医療機関での自己負担の合計額が年間10万円〜18万8000円の場合は控除額の大きい方を利用する
- 市販薬の購入と医療機関での自己負担の合計額が年間18万8000円を超える場合は医療費控除を利用した方が得になる
目安は上記の通り。これを目安にどちらで申告するのが得なのかを計算してみましょう!
まとめ
いかがだったでしょうか?
セルメ税制はまだまだ利用者が少ないですが、今後のさらなる高齢化による医療費の増大を少しでも軽減できる制度として、もっと強化されるべきだと思いますし、もっと利用しやすいように制度を整えるべきだと思います。
今後、国は膨れ上がる医療費をどうにかしようと画策するでしょうから、この制度にスポットが当たり、予算が回される可能性も十分にあります。
皆さんが市販薬を使うようになれば薬剤師の重要性も増していくことでしょう。
もちろん、市販薬もなにも使わずに健康でいられることが理想ですが、時には市販薬の力に頼ることも検討してみてください。
セルメ税制について私の見解としては、時間の節約の面が大きいと思います。
病院やクリニックは予約外で行くととんでもない時間待つことになりますし、例えば整形外科などは一回受診して、その痛みの原因が鎮痛剤を使用すること以外何もできないと診断されたら、あとは市販薬を使っていけばいちいち病院で待つことも不要ですし、病院に行く手間も省けます。
確定申告は慣れればそこまで時間はかかりませんし、税務署でやり方も教えてもらえます。年に1回の申告でいいわけですからそれくらい頑張れると思います。
何回も病院に通う時間より、確定申告で1日使った方が時間の使い方的にも得だと思いますので、市販薬を有効活用して、ご自身の体をメディケーションしていきましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。