今回は私たちの蓄財を阻む難敵である様々な罠について、マーケティングや心理学を交えて解説していきます。罠について理解していれば避けることは容易ですし、変に我慢をしてストレスが溜まるのを防ぐことができます。この記事を読むことで、世に蔓延る浪費の罠を華麗にかわし、健やかな蓄財生活を営むことができるでしょう。
目次
人間は無料という言葉に弱い?
実際に無料の試供品、○○が今だけ無料、無料相談受付中などいろんなところで目にすることがありませんか?
それと同じくらい、「タダより高いものはない」って言葉も聞いたことがあるかもしれませんが。
でもやっぱり無料って言葉は何となく響きがいいですし、無料で何かを手に入れた時というのは優越感だったり満足感が得られたりしますよね?
ですがこれが大きな罠なのです。
冷静に考えれば無料で商品やサービスを提供しているだけは企業は儲かるはずがありません。
なので、必ずその先に「利益を生む何か」が来るはずです。
例えば試供品プレゼントであれば、応募要件に名前とメールアドレスを要求したり、無料体験であればそのあとに有料サービスの説明をしたりなどがあります。
メールアドレスや電話番号を登録するだけで貰えるなんてラッキーだぜ!なんて思ってはいけません。
あまり知られていませんが、私たちの個人情報というのは裏で売買されています。突然よくわからない営業メールや電話が来たことはありませんか?
私たちの情報は「顧客リスト」として裏で取引されており、商品を売りたい会社に流されています。そしてそのリストというのは要するに「カモになり得る人リスト」なわけです。
無料に飛びつく人というのは往々にしてお得とかいう言葉に弱く、物の本質的な価値を見極めることが苦手な人たちです。それはつまり、少し背中を押せば買ってくれるかもしれないカモリストというわけです。
人間は弱い生き物ですので、多くの営業を受けたら耐えられず買ってしまうものです。
そもそも営業を受けないように立ち回る必要があります。
そのためにはまず顧客リストに載らないことです。軽々しくメールアドレスや電話番号を登録しないというのは前提条件ですが、無料体験などは極力避け、本当に必要な場合は有料でもいいから試してみるくらいの意識でいるべきです。
よくあるセールスの常套句で3個買ったら1個無料なども無料の罠ですね。
本来1個買うつもりだったものを2個買わされているわけですから。腐らないものとかならまだしも、食材などで腐らせてしまったら最悪です。
鉄則は必要なものを必要な分だけを買うことです。お得や無料という言葉に惑わされず、冷静に買うか買わないかを判断することで大切なお金を守りましょう。
極端な選択肢を回避したくなる心理
皆さんはご飯を食べに行った時に松竹梅のコースを目にしたことはないですか?
- 700円の梅コース
- 1500円の竹コース
- 3000円の松コース
この場合、何となく真ん中を選びたくなりませんか?
例えば、このコースはとんかつ定食のもので、値段によって肉質が異なります。グラム数は変わりません。と言われたらどうでしょうか?
美味しいとんかつを食べたくてとんかつ屋に行ったとして、一番安いコースを選んでそこまで美味しくなかったらどうしよう・・・という迷いが生まれるのは僕だけでしょうか?
仮にそのお店に何度も行ったことがあって、すべてのコースを食べたことがある上で、梅コースを選ぶならわかりますが、事前情報なしで所見で梅コースを選ぶのは少々リスキーですよね。
ましてや、ある程度はお金払うつもりで外食に来ているのにケチケチするのもな~なんて心理状態にもなりそうです。
人間はこういう状態になった時に自然と真ん中のコースを選びがちだそうです。この現象を「極端回避性」と言います。
言葉通り、極端な選択肢を避けて安牌を狙っていくということですね。
3000円はさすがに予算オーバーだし、かといって700円は安いから固くて不味い肉が出てくるかもとか思い始めるとそれはもうお店の思うつぼです。
この場合、お店側が一番売りたいのは1500円の竹コースです。
上と下に比較対象を設けることで、心理的に中間を選ぶように仕向けています。
サービスなどもそうですが、安すぎると大丈夫か?と心配になりますし、高いのは自分には合っていないな~・・・あれ?ちょうど間くらいのやつあるじゃん!ってなることがあると思います。
引っ越しの時の賃貸業者もよくやる手口です。
最初に予算を聞かれ、その予算内で探してくれますが、最初に内見させるところはぼろかったり、あまり魅力的でない物件で、次に予算よりそこそこオーバーだけど非常にいい物件、最後に予算より少しオーバーだけどまずまずの物件の順で案内します。
すると、最終的に少し予算オーバーの最後の物件を選ぶ人が大多数です。
結果的に予算以上の家賃を払わされているので、まんまとやられていますね。
このように、企業は人間の心理を巧みに利用して自分たちの売りたい商品、サービスをアピールしてくるので、知らなければなすすべ無しです。わかっていてもきついのに知らなかったらそれはもう美味しく頂かれてしまいます。
これを避けるためには、自分が本当に欲しいもの、必要としているものは何なのかをはっきりさせることです。相手が用意したプランが本当に自分に合っているのか?合っているように思わされているのかと冷静に判断することが重要です。
私だったら、とんかつが食べたくなったら冒険せず既知の店に行くか、徹底的に調査して梅コースでも激うまとかいう情報をゲットできたら梅コースにすると思います。
表現を駆使して魅力的にアピール?
皆さんはビタミンC1000mg配合とかレモン何個分のビタミンC!!という謳い文句を見たことはないでしょうか?
こう見るとたくさんビタミンCが含まれているように見えますが、ビタミンC1000mgは1gであり、その辺のサプリメントにも普通に入っている量です。
レモン何個分というのも、そもそもレモンにはビタミンCが豊富という認知バイアスが掛かっています。レモンのビタミンC含有量は100gあたり100mgです。そこそこの含有量ですが、さらに多く含有している野菜や果物はたくさんあるので、レモン換算で何個分と言ってもそこまで意味がないのです。例えばアセロラは100g当たり1700mgなのでレモンの17倍という圧倒的含有量です。
ちなみにこの含有量はキウイフルーツ(100g当たり140mg)以下です。野菜だとブロッコリー(100g当たり120mg)にも劣ります。
ビタミンCが酸っぱいイメージというのもかなり認知バイアスが掛かっています。酸っぱい成分はクエン酸であり、ビタミンC本体はほとんど酸っぱくありません。
このように、同じ意味を持つ情報であっても焦点を当てるところをずらすことによって異なった意思決定を行うことを行動経済学の用語で「フレーミング効果」と言います。
これは、私たちの購買行動が無意識的にコントロールされていることを意味します。
あらゆる商品は企業がこういった効果を巧みに利用し、魅力的に見せてきます。これにより、本来の価値を見失ったり、過度に購買欲を掻き立てられたりとまんまと踊らされてしまうわけです。
何かを買うとき、欲しいと思った時は一度冷静になり、これは企業のアピールによってよく見えている可能性がある、自分がこれを買ったらどんなメリットがあるのか、本当に使いこなせるのかなどをしっかりと把握し購入するようにしましょう。
これを意識するだけで、欲しい!と瞬間湯沸かし器のごとく購買欲が湧き出てもブレイクタイムを設けることで欲しくなくなる場合がほとんどです。
ぜひやってみてください!
高額の買い物をするときにオプションの値段が安く思えてしまう現象
皆さんは高額の買い物をした時に、オプションなどが安く見えてしまう経験をしたことはないでしょうか?
例えば車を買うときです。
車の価格が200万円だとして、最初は乗り出し200万円だと思っていたのにあれよあれよとオプションが付き、気づけば220万円になっていたといった現象です。
200万円の買い物をすると決めた瞬間に、数千円のオプションパーツやアフターサービスなどが安く見えてしまうことありますよね?
これを心理学の言葉で「感応度逓減性(かんのうどていげんせい)」と言います。
感応度とは感覚ですね。逓減とは徐々に減少していくことです。
つまり、扱う金額が大きくなってくると損得のインパクトが減少する(麻痺する)ということです。
普段であれば1万円は大金だと思っているのに、車という高額な商品を比較対象とした場合に1万円が安く思えてしまうということです。本来1万円は大金です。丸一日自分の時間を労働に捧げてやっと得られるお金です。
ですが、200万円の車を前にすると、オプションの数千~数万円が安く見え、200万円も220万円も大して変わらないだろう!と思えてきてしまいます。
20万円稼ぐのは本当に大変だと普段ならわかっているのに冷静な判断ができないのです。
この現象は売り手側にも同じように生じているそうです。
売り手側も車に比べたらオプションが安く思えているのでおすすめであれば本気で進めますし、高いと思っていないのです。(例外もあるかもしれませんが)
この心理現象は扱う額が大きくなればなるほど受ける影響も大きいです。
結婚式のオプション、住宅の購入などは非常にこの現象が起こりやすいとされていますので、特に注意が必要と言えます。
この現象をうまく回避するコツとしては、「1万円はどんな時でも1万円」と自分に言い聞かせることです。貯めるに苦労した大切なお金です。それの価値はいつ何時も変わりません。自分の時間を切り売りして稼いだお金なんだとしっかり意識することで、感応度逓減性の罠を回避していきましょう!
特別セールなどの「今だけ!」に惑わされるな!
これもよくある手法ですが、キャンペーン中で今ならこの値段だけど明日からはもうこの値段にはなりませんとか、特別セール中とかいう「今だけ」のようなあたかもこの機会を逃したら自分が損するかもしれないと思わせるようなセールスがありますよね?
このセールスには人間心理の「損失回避性」という現象が利用されています。
よく聞く話かもしれませんが、人間というのは得をすることの喜びよりも損をすることの嫌悪感の方が強い生き物です。
つまり、「損したくないから買う」という誘導をされているわけです。
この心理現象は買い物、投資など人生の多くの選択において起きる人間のバイアスです。人間は損を回避しようとするあまり、非合理的な判断をしてしまうことが多いのです。
例えば、特別セールの時に、その商品の適正価格がそもそもセール価格だった場合、最初は店がぼったくり価格で販売していたことになります。セール前の価格で買ってくれたらラッキー程度に販売しておいて、売れなかったらセールで値下げをし、利益を取れる値段で販売する。そうすれば消費者はお得になったと錯覚するかもしれませんが、店からしたら普通の値段で売っただけなのです。
「今だけ」とか「限定」という言葉を聞くと、それを逃すことによる機会損失を避けたくなります。もう二度とこの価格で買えないのではないかとか考えさせられたらまんまとやられています。
断言しますが、その時のセールの時より安く買える時は絶対にあります。なんならほかの店では今目にしているセール価格が定価として売られている可能性だってあります。
その時にその商品が買えなくても死ぬわけでもないのですから、慌てて買う必要なんてないのです。
損失回避性の罠を避けるためには、そもそもセールに行かないというのが圧倒的に効果的です。本当に心の底から欲しいのであれば定価で買えばいいじゃないですか。満足のいく買い物ができればそれを大切にするので次のものが欲しくなるなんてありません。
すべての項目で言っていますが、自分が欲しいものを冷静に見極め、それをピンポイントで購入すれば物欲なんて十分満たされます。
よくないのは、欲しくなかったのに欲しいと思わされて買わされることです。そういったものは一時の感情に流されて買ったものなので愛着も湧きにくく、家のスペースを取るだけのゴミになってしまうでしょう。
まとめ
今回はアメリカの心理学者であるカーネマン氏、エイモス・トヴェルスキー氏がモデル化したプロスペクト理論をベースとして、人間の行動がいかにしてコントロールされているかを解説してきました。
偉そうなことを言っていますが、自分自身も非合理的な行動をしていることがあるのでまだまだ修行が足りないなと思います。少しずつ意識をして経験を積むことで「物を買わされる」から「本当に欲しいものだけを買う」へシフトしていけるといいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。